ショート動画アプリのTikTok(ティックトック)を運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)は8月23日、アメリカ時間8月24日にアメリカ政府を相手取り訴訟を起こすと発表した。
提訴のきっかけは8月6日、ドナルド・トランプ大統領がアメリカの司法管轄下にある個人や企業がバイトダンスおよび関連企業と取引するのを禁じる大統領令に署名したことだ。さらに8月14日、トランプ大統領はバイトダンスに対してアメリカ事業を90日以内に売却するよう命じた。
バイトダンスの声明によれば、同社はアメリカ政府が提起した(安全保障上の)懸念に対して、1年近くにわたって誠意ある意思疎通を図り、解決策を提案してきた。にもかかわらず、アメリカ政府が「事実を顧みず、適切な法的手続きを踏まず、民間企業同士の交渉に介入しようとした」ため、「司法制度を通じて異議を唱える以外に選択肢はなかった」と主張する。
勝訴の可能性低いが、時間稼ぎには有効
8月6日付の大統領令は45日後の9月20日に発効する。そこでバイトダンスは訴訟手続きと同時に、取引禁止に備えた危機対応計画を練っている。同社によればアメリカのTikTokユーザーは1億人を超えており、アメリカ法人の従業員は1500人余り、ビジネスパートナーは数千社を数える。仮にアメリカ事業が閉鎖されれば、バイトダンスが(企業価値の低下などで)被る損失は少なくとも2000億元(約3兆円)に上るとみられる。
また、バイトダンスはアメリカ法人の従業員に賃金を払えなくなる可能性もある。同社は海外の金融機関などと交渉し、大統領令の発効後も賃金支払いや従業員のそのほかの合法的権利が維持されるよう備えている。
アメリカ政府に対する訴訟の行方について、アメリカのある法律専門家は「総合的に見て、バイトダンスが勝訴できる可能性は低い」と財新記者に語った。しかしアメリカでの訴訟プロセスが長期に及ぶことを考慮すると、不確実性はあるものの、「訴訟を通じて少なくとも一定の時間稼ぎができるだろう」と、この専門家は指摘した。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は8月23日
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