東急、北海道に「青い豪華列車」投入で何目指す? 伊豆を走る「ロイヤルエクスプレス」北の大地へ

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ザ・ロイヤルエクスプレスの車両自体にも一部手を加えている。もともとは8両編成だが、電源車の電力供給能力と道東エリアのホームの長さによる制約のため、今回の運行では5両に減車した。

ステンドグラスの天井がシンボルの6号車内(撮影:尾形文繁)

主にグレードの高い「プラチナクラス」の車両を選んでおり、展望室のある両側の先頭車(1・8号車)とキッチンカーの4号車、トイレを備えたダイニングカーの5号車と、天井にステンドグラスを施した6号車の5両を連結する。機関車や電源車と連結するため、先頭車は連結器カバーを取り外し、ブレーキの空気や電源供給用の配管なども設置した。

列車が北海道に向け、伊豆を旅立ったのは7月21日の早朝4時半過ぎ。くしくも3年前に伊豆で運行を開始したのと同じ日だった。空が白み始めた伊東駅のホームで、ザ・ロイヤルエクスプレスを担当する東急交通インフラ事業部の片桐淳也課長は「各社や地域の支援をいただきながら準備して、ついにこの日が来たかと込み上げてくるものがある」と、北へ向かう列車を見送った。

コロナ対策を施して運行決定

ツアープランは今年1月に発表し、2月に販売を開始。抽選による当選確率8.2倍と好調な滑り出しだった。が、年頭から広がりつつあった新型コロナの影響が次第に影を落とし始める。伊豆でのザ・ロイヤルエクスプレスの運行は、コロナの感染拡大を受け3月から中止となった。

北海道では黄色いディーゼル機関車2両が牽引する=7月28日(写真:東急)

北海道クルーズトレインについても「全面的な中止や延期も可能性としては頭にあった」(東急の担当者)。だが、「北海道の観光振興のためにもできる限り運行を実現したいと考えていた」といい、「最終的には政府方針や北海道地域とも協議のうえ、6月19日の県外移動自粛解除をふまえて今回の内容を決定した」と説明する。

いよいよ北海道を走り出すザ・ロイヤルエクスプレス。深刻な経営難が続くJR北海道にとって、観光列車は鉄道や沿線の観光活性化につながる重要な施策だが、東急にとっても新たなチャンスを開くプロジェクトであることは間違いない。

同社の髙橋和夫社長は2019年2月の運行発表時に「(列車が)認知されることで伊豆の活性化に寄与する」と狙いを語っており、重点は認知度の向上にあるようだ。ただ、道内には東急グループの企業が以前から多く存在するほか、東急は民営化した道内7空港を運営する「北海道エアポート」にも出資する。列車と連携した観光・旅行ビジネスの可能性は幅広そうだ。

また、北海道に次ぐ他地域での運行があるかどうかも注目される。東急の担当者は「まずは北海道運行を成功させるのが使命」と強調したうえで、「地域活性化など、われわれが力を発揮できるようなお声掛けがあれば考えていきたいとは思う」と話す。北海道での運行の成否は今後の展開にもかかわってきそうだ。

コロナ禍で観光そのものが大きなダメージを受ける中、クルーズ列車の運行は沿線をはじめとする北海道の観光振興にメリットをもたらすか。期待を背負い、ロイヤルブルーの豪華列車は北海道の鉄路を走り出す。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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