コロナ危機が導く「グローバリズム以後」の世界 「東京五輪」と「大阪万博」を諦めない日本の末路

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中野:今度のコロナ危機では、イギリスのジョンソンのように失敗したとしか見えないケースも含めて、ほとんどの国で政治のトップの支持率が上がったのに、日米では下がったらしいですね。とくに日本は、少なくとも第一波については、うまくやったのに。

柴山 桂太(しばやま けいた)/京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門は経済思想。1974年、東京都生まれ。主な著書にグローバル化の終焉を予見した『静かなる大恐慌』(集英社新書)、エマニュエル・トッドらとの共著『グローバリズムが世界を滅ぼす』(文春新書)など多数(撮影:佐藤 雄治)

柴山:ベッドの数を増やすとか医療者を増員するといった機動的な対応をせず、言葉の力で国民を安心させることをしてないわけですから、そりゃ支持も落ちますよ。

佐藤:「カネは出さず、責任も取らず」では、たとえ感染爆発が生じたとしても、政府がふたたび緊急事態宣言を出すことはできない。これ以上、補償もなしに休業や自粛を全国規模で要請したら、さすがに不満が爆発するでしょう。

柴山:ただ、コロナ対策を政府がトップダウンで指揮したとしても、うまくいったかはわからないですね。今回改めて感じたのは、トップの政策形成能力の恐るべき凋落ぶりです。「GoToトラベル」が典型で、もう名前からしてひどい。

佐藤:エドマンド・バークがフランス革命を批判した表現にならえば「バカげた理念を、行き当たりばったりの実践でどうにか埋め合わせようとする過程」ですね。

非常時における「ボトムアップ型」とは

柴山:意思決定をトップダウン型にするというのが行政改革の目的だったのですが、これなら昔のボトムアップ型の方がまだよかったのではないか、とさえ思える。官邸の思いつきに行政が振り回されている。中野さんも被害者の1人じゃないですか。

中野:ノーコメント(笑)。

佐藤:とはいえ、こういう危機的状況で国全体の意思決定を行うとき、ボトムアップで対応できるんでしょうか。個々の現場対応なら大丈夫だと思いますが、国全体となると規模が違う。すり合わせしていては間に合わないのでは。

柴山:非常時においては「のるかそるか」だから、意思決定が早いトップダウンが向いている。それは確かですね。ただ、ここで僕が言いたいボトムアップ型とは、時間をかけてすり合わせて意思決定をするというより、組織の下から上がってくる声を聞いてプラグマティックに修正を重ねていくということです。

医療や教育など、行政の最前線にいる人の声を踏まえて改善の手を探していく、となるべきだと思うんですが、今は逆にトップの思いつきに現場が振り回されているように見えます。

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