「支配人の9割が女性」東横インの驚きの仕組み 未経験の専業主婦から支配人になった人も

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当初は「補佐役が向いている」と考えていたが、あるとき、先輩支配人の仕事ぶりを見て「ものすごく忙しそうなのに、生き生きしている。自分でもやってみたい」と考えた。相談してみると、先輩支配人は応援してくれたうえ、本社宛に推薦状まで書いてくれた。こうして44歳のとき、中野さんは支配人になった。前職の経験が生きることは多く、とくに役立ったのはクレーム対応の経験だった。

「自営業のときは17年間、クレーム対応をすべて自分でやりました。お客様からお電話を受けて許していただけるところまで、時に、遠方まで車で赴いて返品・交換をしたこともあります。お店の看板を自分たちだけで背負う自営業に比べると、東横インはすでに築いたブランドがあるうえ、本社や先輩支配人の方々から教えていただけるので精神的には楽かもしれません」

専業主婦から45歳で支配人として入社

「仙台東口Ⅱ号館」と「福島駅東口Ⅱ」の支配人を務める平野ひとみさん

専業主婦から支配人になった人もいる。平野ひとみさんは、現在「仙台東口Ⅱ号館」と「福島駅東口Ⅱ」の支配人を務める。福島の店舗には自宅のある仙台から新幹線で30分弱かけて通勤している。2017年4月、45歳のとき、支配人として入社。それまで20年間は、専業主婦として家事育児に専念していた。

「ずっと、外に出てみたいと思っていました」と言う平野さんは、東横インに入社する前の半年間、タリーズコーヒーでアルバイトをした。同僚は大学生やフリーター。あるとき、周囲の大学生が一斉に就職活動を始めたことに気づき、自分もやってみたくなった。そんな折、東横INNの支配人募集のWebサイトを見つけた。

「45歳のときです。未経験でも受け入れてくれる職種が限られていましたし、まさか入れるとは思っていませんでした」

パソコンで仕事をすること自体がほぼ初めてだったという平野さんは、2カ月間の研修期間中に、社会人の心得をイチから覚えていった。「文書には日付を入れること。インターネットで検索すること、メールをやり取りすること、すべてが初めてでした」。

大変ではありませんでしたか、と尋ねると「家の外に出ていろんな人と触れ合うのは楽しかった」と笑顔で答える。

「会社にはさまざまな専門知識を持つ人がいて、もしパソコンが動かなくなったらIT関連のグループ会社の人がリモートで直してくれます。私はこの時期、離婚したり就職したり、周囲の状況が大きく変わりました。はたから見れば大変そうだったかもしれませんが、自分では楽しく選択してきたと思っています」

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