社会貢献は「自分のためにやる」エモい働き方だ 日本の女性起業家とマーク・ベニオフの共通点

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このようなミッションを抱いたのは、3年前に子どもを出産したことがきっかけでした。出産直後に痛ましい過労死の事件が報じられ、子どものためにも、こういうことが2度と起きない世界にしたい、そのために創造性をもって働き方を変えていくのは、私たちの世代がするべきことなんだと強く思ったのです。ですから、子どものため、次世代のためという思いは、弊社の核になっています。

ベニオフさんは、お父様の仕事を手伝っていたことが、セールスフォースの事業につながっていますね。取引業者に会うために長時間かけて出張したり、在庫をあちこちに送ったり、販促チラシを発送したりという雑務をすべて手作業でやっているお父様を見て、コンピュータでもっと簡単にしてあげたいという動機が生まれています。家族のために何かしてあげたいという気持ちは、私自身も共感できるところです。

ミッションというものは、社会のためだけでなく、自分自身のためにもなるものだとも思います。事業をしていて、壁にぶち当たるタイミングは必ずあるものです。利益のためだけの事業なら、そういうときに投げ出してしまいがちですが、「次世代のため、子どものためなんだ」という強いエモーションの核が自分の中にあれば乗り越えていけるものです。

具体的な人を思い浮かべられると、頑張れることはどんなときでもありますよね。ベニオフさんも、弁護士として活躍したお爺様の信念や精神に影響を受けていて、「お爺様にセールスフォースタワーを見せたい」という個人の強い思いを持っていたりします。私の場合は、それが子どもたちなんですね。

こういったエモーションは、弊社のメンバーも持っていて、文化にもなっています。もちろん事業ですから「お客さまのため」が1番であるのは変わりませんが、それを超えた社会的ミッションという意味で、次世代のために、子どものためにという意識が強いのです。

お天道さまが判断軸

子どもの頃から染みついている感覚で言えば、「お天道さまに対して恥ずかしいことをしていないかどうか」が、私の判断基準になってもいます。

私にとっては当たり前のような感覚ですが、ステークホルダーでもお客さまでもない、まずは「お天道さま」の存在を意識するというのは、日本人的メンタリティかもしれませんね。

近年は、GAFAに代表されるような巨大IT企業を中心に、租税回避、欧州を中心とした個人情報保護、競争法(独占禁止法)といったさまざまな社会課題が議論されています。このような議論でも、社会に反しても構わない、利益だけを追求して、負の側面が出てきても関係ないんだというような考えは、お天道さまに背くものだと感じ、私にはできません。

それに、私は、子どもが成長して大人になったとき、「お母さんは世界をハッピーにした真の開拓者だよね」と言われたいとも思っているんです。お天道さまにも、子どもにも、誇りを持てることをやっていきたいですね。それが個人としても、経営者としても、大事な判断軸になっています。

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