タイ「反政府デモ」若者たちが求めていること ヨーロッパ暮らしの国王に対する批判も

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「私たちの国には多くの政治的な分断がある。しかし今は立場の違いにかかわらず多くの人々が団結し、この政権の正当性に疑問を投げかけている」と、民主活動家のナダター・マハッタナー氏は語る。「ここに集まった人を見てほしい。デモにはいろいろなタイプの人たちが参加している」

政治改革を求めてデモが行われた(写真:Adam Dean/The New York Times)

抗議運動のリーダーたちが要求しているのは、新しい憲法だ。現在のように軍によって書かれた憲法ではない。議会の解散も求めている。タイでは軍や王室を批判した人が行方不明になったり、殺害されたりする事件が相次いでいるため、彼らは人権の保護を訴えている。目的が達成されるまでデモを続ける、と言う。

「私たちは国を憎んでいるわけじゃない。プラユット・チャンオチャ、あなたを憎んでいる」。15歳の学生ベンジャマポーン・ニバスさんは、ほかの人たちといっしょにステージに立って、こんな童謡の替え歌を歌った。「独裁なんか欲しくない」。

16日のデモは、タイの絶対王政を終わらせた1932年の無血革命(立憲革命)を記念して建てられた民主記念塔の前で行われた。現在のタイ王国は立憲君主制だが、抗議運動の一部指導者は、立憲君主制にもとる行為に及んだとして王室を非難している。

1年の大半をヨーロッパで過ごす国王

マハ・ワチラロンコン国王はタイにいることが少なく、1年の大半をヨーロッパで過ごしている。国王は財政と軍隊に対する影響力を強め、王室の財源と国軍の重要部隊を自らの支配下に置くようになった。

8月前半に行われたデモで、抗議者の一部は王室の権力に歯止めをかけるよう訴えた。不敬罪が存在し、王室を批判すれば最長で15年間収監される恐れのあるタイでは異例の出来事だ。その後、当局はデモ指導者に対し、演説で王室に言及しないよう圧力をかけた。

しかし16日のデモが夜になっても続くなか、労働法、学生の髪型、同性愛者やトランスジェンダーの権利についてのスピーチが終わると、若き人権派弁護士のアノン・ナムパー氏がステージ上で当局の要請に公然と反旗を翻した。その前から民主記念塔の白い表面には、あるハッシュタグがレーザー光で映し出されていた。「どうして王が必要なのだろうか?」とタイ語で問いかけるハッシュタグだ。

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