アメリカで「大学に通えない大学生」溢れる事情 オンライン授業でキャンパス遠く、学費下がらず

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USC4年生のデラニ・ウォルフさんは、同大のキャンパス活動部門で働きながら学生生活を送る。今年のウェルカム・ウイーク中には、家族が住むカリフォルニア州内の家からトリビアクイズのイベント開催に携わった。

例年のようにキャンパス内のパブで実施すれば、50人ぐらいは来てくれそうだった。だが、今回は全米からのログイン参加は十数人しかいなかった。

それでも彼女は、画面越しにでも友人らと会えてうれしさを隠さない。「4年生なので、今さらウェルカム・ウイークを利用して新たな知り合いを得ようとは思わない。でも、もしも私自身が新入生だったなら、ずっと寒々とした気持ちになっていただろう」と話す。

USCのキャロル・L・フォルト学長は、新入生向けに動画で配信したメッセージで、この秋を「特別な学期」と呼びつつも「かつての学生たちと同じように、あなた方もきっと環境になじんでいくはずだ」とエールを送った。また、在宅授業に学生がストレスを感じることを認めた上で、大学にはオンラインで受講できるヨガや瞑想の授業もあると強調した。

「これが普通で、皆受け入れようとしている」

演劇コースのバーチャル歓迎会に先週参加したショーウィッチさんは、思っていたほど悪くなかったと評価。「1分ほどで、以前からこんな感じだったというようになった。これが普通で、われわれは皆受け入れようとしている」と前向きだ。

先々のことはあまりくよくよと考えず、現実をありのまま受け止めるというショーウィッチさん。キャンパスに足を踏み入れることができた時には、こんな奇妙な境遇に置かれていた同じ仲間同士で、普通のクラスメートとは違った形で、絆が深まると期待を抱いている。

一方、数千人に上る海外の学生には、時差という厄介な問題が立ちはだかる。香港にいる3年生のロニー・フーさんは、米国の実際の授業時間に合わせて現地の午前5時に起床するつもりだ。授業は録画されるので万が一、寝過ごしても問題ない点には感謝している。

しかし、教授やクラスメートと対話ができないのは「まるで最も高額なストリーミングサービスを定額契約している」ような気持ちになってしまうという。

海外の学生はもちろん、授業料を全額支払っている。USCが今年3.5%値上げして年間5万9260ドル(約626万円)としたことで、同大は反発の声にもさらされている。

(Rachel Parsons記者)

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