取り調べ「弁護人立ち会い」認めない日本の問題 法務・検察行政刷新会議における議論の焦点

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「2012年に始まった検察での取り調べ時の録音・録画も、しばらくは試行という位置づけでした。法律の施行は2019年です。録音・録画も初めは強い抵抗がありました。でも、現在では検察官が積極的に使おうとしている一方、裁判所がビデオを証拠とすることに慎重になっている。撮影の構図によって印象が変わるなどの問題があるからです」

──弁護人の立ち会いも“お試し期間”のような形で実施可能ということでしょうか。

「そのとおりだと思います。録音・録画と同じようなプロセスで可能になるのではないでしょうか。『弁護人を立ち会わせたからといって大きな支障は生じない』と私は考えています。検察官にとってのメリットもあるはずです。私が刷新会議に期待しているのは、委員の多くが刑事法の専門家ではないという理由で議論を避けず、これまで専門家の間でされてきた議論を外から見直す場になることです」

インタビューに答える後藤氏。取材はオンライン(撮影:木野龍逸)

海外「弁護人抜きの取り調べは自白強要と同じ」

取り調べ時の弁護人の立ち会いは、欧米では広く認められている。アメリカでは、連邦最高裁によるミランダ判決(1966年)以降、取り調べの前に、被疑者が弁護人と相談する権利や弁護人を同席させる権利などを説明することが必須になった。欧州連合(EU)では、まちまちだった加盟各国の対応が2013年のEU指令によって、立法措置に進むことになった。

こうした中、日本の対応は大きく遅れている。

2008年には、国連の自由権規約委員会が日本政府に対し、取り調べに弁護人が立ち会う権利を確保するよう勧告した。2013年には、国連の拷問禁止委員会が、弁護人の立ち会いがない取り調べなどに懸念を表明。モーリシャス出身の委員は「(自白に頼るのは)中世の名残」という言葉で日本の姿勢を批判した。これに対し、外務省の上田秀明・人権人道担当大使(当時)が「黙れ!(Shut up!)」などと怒鳴った様子が動画で流れ、日本はさらに厳しい批判を浴びた。

次ページなぜ、多くの国は弁護人の立ち会いを認めているのか
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