取り調べ「弁護人立ち会い」認めない日本の問題 法務・検察行政刷新会議における議論の焦点
──後藤委員は刷新会議で、刑事手続きに関して3つの論点があると提案しました。1つは、弁護人の立ち会いなどによる取り調べの可視化の促進。2つ目が証拠開示の拡大。3つ目は、検察官調書の扱いに関する刑事訴訟法の見直しです。この中でいちばん重視しているのはどれでしょうか。
「とくに重要だと思うのは、取り調べ時の弁護人の立ち会いです。証拠開示の拡大や刑訴法の見直しは技術的な問題ですが、弁護人の立ち会いの必要性は、その議論に専門性が要求されるテーマではありません。(刑事法の専門家ではない人も委員になっている)今回の会議でも議論できると思います」
──刑事手続きについては議論すべきではない、という意見も出ています。
「委員の中で刑事系の法律の専門家は今のところ3人だけです。私と井上宏さん(元福岡高検検事長、今年6月に定年で退官)、太田誠さん(元警察大学校長、2018年7月退官)。だから、手続きのことまで論じるのはふさわしくないという考え方なのだと思います。しかし、弁護人の立ち会いについては過去にも、大阪地検特捜部の検事による証拠改ざん事件を機に設置された『検察の在り方検討会議』(2010年11月〜2011年3月)や法制審議会の特別部会などでも議論してきました。その結果、『やるべき』と『捜査の妨げになる』という意見が対立し、結論は先送りになっていました」
「そうした経緯を考えると、専門家同士で議論をしても同じことの繰り返しになりかねません。委員の人選によって結論がほぼ決まるので、前に進みにくいのです。むしろ、専門家ではない人々の議論が必要なのではないか。私としては、取り調べを受けた人や検察官、弁護人などの意見を刷新会議で聴いて、刑事法の専門家ではない方たちがどう考えるかを聞いてみたい。そのためにも、今回の委員の構成には積極的な意味があると思います」
刷新会議のきっかけは黒川問題だけではない
──刷新会議は黒川氏による「賭け麻雀」問題を受けて設置されました。したがって、刑事手続きまで含めるのは広げすぎ、という声もあります。
「今回の刷新会議を設置したきっかけは、黒川問題だけではなく、ゴーン被告の逃亡を受けた国際世論が日本の刑事手続きに批判的だったこともある。私はそう理解しています。だから、刑事手続きの問題がテーマに入るのは、自然ではないでしょうか」
──とはいえ、実際に弁護人の立ち会いを実現するには、法務省の法制審議会での議論も必要だと思います。
「いえ、今回は具体的な立法措置の議論までは必要ありません。そもそも弁護人の立ち会いは、憲法(第34、38条)からも導ける権利です。刑事訴訟法など法令には、立ち会いを禁止する条文はありません。検察官による在宅の任意聴取でも、弁護人が立ち会いを認められた事例を聞いたことはありませんが、禁止する法的な根拠はありません。したがって、運用によって現状を変えられる部分も大きいと考えています」
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