取り調べ「弁護人立ち会い」認めない日本の問題 法務・検察行政刷新会議における議論の焦点

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──なぜ、多くの国では弁護人の立ち会いを認めているのでしょうか。

「被疑者が孤立した状態で取り調べを受ける場面で、本当に黙秘権を行使するのは難しいという認識があるからです。アメリカのミランダ判決では、取り調べの前に被告の権利を捜査側が告げなかったため供述が証拠として採用されませんでした。それ以降、少なくともアメリカでは、被疑者だけで捜査官の取り調べに臨むことを強制するのであれば、身体拘束された被疑者が持つ黙秘権は守れない、とされています。過去の経験から、弁護人抜きでの取り調べは自白強要になってしまうと考えているわけです」

「欧米だけではありません。韓国や台湾も弁護人の立ち会いを認めています。極東でこれを認めていないのは、中国と北朝鮮と日本です。そのグループに入っていていいのでしょうか。今の刑事手続きのあり方は、日本にふさわしいのか。そこを考えるべきでしょう」

日米地位協定にも影響

被疑者の取り調べに弁護人の立ち会いを認めるかどうか。この問題は、日本に駐留するアメリカ軍の兵士・軍属らが日本で被疑者となった場合の措置にも影響を及ぼしている。日米安保条約の運用基準でもある日米地位協定は、起訴前にアメリカ軍人らを日本側に引き渡すことを基本的に認めていない。地位協定の改訂を日本政府が求めた際、アメリカ側は「被疑者の権利も整備されていない日本に被疑者を引き渡すわけにはいかない」との姿勢を示してきたと言われる。

──「アメリカ軍人らの犯罪を日本の手で裁けないのは、独立国としておかしい」との声は再三起きています。2009年に沖縄県読谷村で起きたアメリカ兵によるひき逃げ死亡事件では、被疑者のアメリカ兵が、弁護人の立ち会い抜きでの任意の供述を拒むという出来事もありました。

「アメリカ軍の中にも弁護士がたくさんいます。ミランダ判決を前提にすれば、彼らの目には、弁護人抜きでの取り調べは非常に危ないものに見えるでしょう。そんな危険な刑事手続きに、合衆国の軍人を委ねることはできないと考えるでしょうし、アメリカ国民に対しても説明ができません」

「被疑者の引き渡しについて、『アメリカが日本の主権を侵害している』という視点だけでは足りないと考えています。日米両国の刑事手続きの公正さに対する考え方が対立しているという面を見るべきです。さらに言えば、日本の刑事司法が国際標準に合っていないために、日本の裁判権が妨げられているとも言えます」

「そういう意味では明治初めの不平等条約と同じ。露骨に言うと、相手国からすれば日本が遅れているから平等には扱わないということになるのかもしれません。日本の刑事手続きが国際標準に追いついていないことが、地位協定の運用にも影響していると思います」

取材:木野龍逸=フロントラインプレス(Frontline Press)

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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