ダイキン工業、空調シェア1位でも危機感のわけ 「ライバルの三菱電機を引き離せ」と大号令

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――自動車業界では「CASE」と呼ばれる地殻変動が起き、原価低減や販売力を競う従来構図から、グーグルなど「GAFA」が狙うサービス競争が主戦場となりつつあります。将来を見据えると、空調機中心の「売り切り型ビジネスモデル」で大丈夫でしょうか。

それはそのとおり。われわれは空調機だけの機器販売で勝ってきた会社だが、将来はモノからコトへ比重を移し、お客さんの付加価値をどうつくるかに変えていく必要がある。

エアコンを買うのではなく、エアコンを持っている価値、すなわち安全や健康、快適性がキーワードになる。オフィスで言えば、空調によって生産性向上などをどう提供していくかだ。

そのときに重要になるのがセンサーであり、データだ。そのためにデジタル化をもっと進めないといけない。業務用など機器に関する運転データをわれわれはいちばん持っており、GAFAにはない強みがそこにある。

M&Aは積極的に仕掛けていく

――そのデータをどうビジネスに生かすかが問われています。

運転データを使えば、「この環境だったらもっとこうすれば省エネになりますよ」とか、「こうすれば快適性を保ちながら長く使えますよ」「そろそろ保守メンテナンスをしたほうがいいですよ」などと提案できる。今よりもう一段踏み込んで、今後は安全や健康でも提案していきたい。

「エアコンを持っている価値が重要になる」と語る十河社長(撮影:ヒラオカスタジオ)

例えば換気量を測定して、部屋が十分換気されているかどうかをチェックしたり、センサーを付けて風の流れを把握したり。部屋の二酸化炭素濃度を測ることもできる。実はそういうツールを開発中だ。

お客さんとしてはデータが見える化できていないと実際は安心してくれない。そういうソリューションをデータを使って提案していきたい。

――データを扱うにはデジタル人材も必要となりますが、どう対応していきますか。

デジタルトランスフォーメーションは、うちの課題として認識している。大阪大学と協力して社内講座「ダイキン情報技術大学」を2017年に開講し、そこでデジタル人材、AI人材を猛烈に育成している。2021年度末に1000人、2023年度末に1500人の人材育成が目標だ。

――海外のM&Aも駆使して世界トップメーカーになりました。今後のM&Aをどう進めていきますか。

M&Aは積極的に仕掛けていきたい。小さいところをパラパラ買うより、大きな額で買ったほうがいいと考えている。今はそういうチャンス。戦略上非常に重要なのはヨーロッパで、(環境に良くない)燃焼暖房に規制がかかっており、今はよくても将来は使えなくなる。

そこで注目されているのがヒートポンプ暖房だ。うちもそれを伸ばしていこうとしており、顧客基盤を持つヨーロッパの燃焼暖房メーカーは(買収対象として)魅力的だ。顧客がヒートポンプに置き換えていこうと思ったときに製品を展開しやすい。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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