「変化に強い」タピオカ店と雑草の共通した戦略 どの市場でどうやって生きていくかという嗅覚

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新たな土地のわずかな期間しか生えることのできないパイオニア植物の雑草は、とても稀有で不安定な存在に思えるかも知れない。しかし、そうではない。

環境が安定した時代であれば、火山の爆発や洪水のような天変地異でもなければ、新たな土地は生まれないかも知れないし、新たな島が出現するような歴史的なイベントを待たなければいけないかも知れない。

しかし、変化の時代である現代では、パイオニアたちにとっては、次々と新しい土地が作られ続けている

何も山を削ったり、海を埋め立てなくてもいい。街の中では家屋やビルが壊されて空き地が出現する。街中に出現した空き地もパイオニアにとっては絶好の場所だ。

それだけではない。たとえば、人間が草刈りをする。草刈りをすれば、競争力の強い植物がすべて除かれる。あるいは、人間が畑を耕す。すると、そこは植物のない新たな土地となる。つまり進んでいた遷移の時計が巻き戻されて、最初の段階にリセットされる状態になるのだ。

求められる「違った能力」

『「雑草」という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか』(日本実業出版社)
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ただし、草刈りをされたり、耕されたりして作られた新しい場所は、まったくの不毛の土地とは環境が異なるから、違った能力が求められる。

今まで植物が育ってきた栄養分の豊富な土壌がある。さらには、土の中に種子を残しておくこともできる。そのため、種子を持ち込むということよりも、あらかじめ種子を播いておいて、そこからいかに成長するかというスピードが求められるのである。

パイオニアの戦略は、ブームの兆しを捉える流行店のようである。流行を追いかけるビジネスでは、パンケーキが流行ればパンケーキ屋を出店し、タピオカがブームになればタピオカドリンクの店を出す。そして、ブームが去るころには、次のブームに乗っかっている。まさに、次々に新たな土地を求めているパイオニア植物と同じである。

パイオニアの戦略にとって重要なことは、「スピード」と「コストを掛けない」ことにある。コストを掛けずに成長し、次の種子を播いておく。これがパイオニアの戦略なのである。

稲垣 栄洋 静岡大学農学部教授

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いながき ひでひろ / Hidehiro Inagaki

1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院修了。専門は雑草生態学。農学博士。自称、みちくさ研究家。農林水産省、静岡県農林技術研究所などを経て、現在、静岡大学大学院教授。『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『都会の雑草、発見と楽しみ方』 (朝日新書)、『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』(亜紀書房)など著書50冊以上。

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