「変化に強い」タピオカ店と雑草の共通した戦略 どの市場でどうやって生きていくかという嗅覚

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雑草の知られざる「パイオニア戦略」とは?(写真:やえざくら / PIXTA)
競争に弱いと認識したとき、あなたはどんな行動を取るだろうか。競争力のない「雑草」の生き様に重要なヒントが隠されている。植物学者である稲垣栄洋氏の著書『雑草という戦略』から抜粋する。

競争に弱い雑草なりの”戦略”

植物でさえも、基本はポジショニング戦略である。

競争に弱い雑草は、競争を避けて変化する環境に対応するというポジショニングが基本戦略である。耕されることに強いものは耕される場所に生え、踏まれるのに強いものは踏まれるところに生え、雑草の中でも比較的、競争に強いものは攪乱の少ないところに生える、というように、自らの得意なところで生えている。

このポジショニングは、単に「場所」のことだけではない。雑草にとって、もうひとつ重要なポジショニングの軸がある。それが、「遷移(succession)」である。遷移とは、時間の経過による植物の移り変わりのことをいう。つまり、私たち人間にとっては「時代の流れ」と言ってもいいかも知れない。

一般的に、遷移は次のような順番で変化していく。たとえば、火山の噴火などで生き物がまったく存在しない何もない新しい土地ができたとしよう。土らしい土もなく、岩がゴロゴロするだけの荒れ地に最初に生えるのは、栄養分がなくても生えることのできるコケ類や地衣類である。

やがてコケ類や地衣類の営みによって、有機物が蓄積し、土ができていく。そして、植物が育つ基盤ができあがってくるのである。

そこに最初に生えるのが、一年生雑草を中心とする小さな草である。小さな草が生え始めると、そこは有機物がさらに蓄積し、土は豊かになっていく。すると、次第に多年生の大きな草も生えるようになり、草が生い茂るようになる。すると、やがて灌かん木ぼくが生えてきて、藪のようになる。

そして、次から次へと大きな木が生えてきて、藪は林になる。そして、やがては深い森になっていくのである。これが遷移である。

この遷移は、商品やサービス市場のプロダクトライフサイクルに似ている。

市場も最初のうちは不毛の土地のようである。市場規模は小さく、そこに侵入するリスクも大きい。これが「導入期」であろう。やがて、市場は次第に大きくなっていく。「成長期」である。市場は急速に成長していくが、やがて成長のスピードが鈍くなる。これは「プラトー現象」と呼ばれている。しかし、プラトー現象を経ると市場は、再び成長をする。これが「成熟期」である。そして、飽和した市場となるのである。

植物の遷移もまったく同じである。まったく何もない導入期に市場に参入するのは、コケのような小さな存在だ。やがて、市場が成立してくると、草が生えてくる。さらに、市場が成長してくると、そこは競争の場となる。そして、次々に競争力のある大きな植物が参入してくるのである。

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