スーパー官僚が語る、管理職の3つの心得 経産省 製造産業局 生物化学産業課長 江崎禎英(下)

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まず相手を信頼すること

三宅:そういえば昨年の製薬業界の新年会では、今まで同席もしなかった経産省と厚労省、文科省が互いをたたえ合っていて、参加者があまりの雰囲気のよさに驚いたと聞きました。また民間企業の人たちは、江崎さんがいると、いろいろなことがいい方向に変わるとおっしゃっていますよ。

江崎:ありがとうございます。最初の3カ月間に悪口を言い尽くされましたからね。「おまえ、どういうつもりだ!」と、エレベーターの中で詰め寄られたり(笑)。

三宅:そういうときは、どうしたのですか。

江崎:とにかく誠意を持って説明するわけです。最初の与党の会議で発言したときは、とんでもないやつが来たと思われたようです。実はこちらもドキドキでしたが、いちばん驚いたのはうちの職員だったようです。「課長、そこで手を挙げるんですか?」って(笑)。

三宅:今は省庁も業界も一体となって、いい方向に動いているようです。

江崎:三宅さんともよく議論しましたね。

三宅:江崎さんは行く先々で難題を解決してこられましたが、取り組む課題はどうやって決まるのですか?

江崎:ここは経産省のいいところだと思いますが、大きなテーマを与えられて「後はよろしく!」という感じです。店頭市場改革のときは、大蔵省から戻ったらすぐに局の総務課に呼ばれて「通産省は金融分野が弱い。君は2年間大蔵省で金融の勉強をしてきたのだから、リスクマネーをやってもらいたい」と。「リスクマネーって何ですか?」って聞いたら、「それは君が考えるんだよ」と言われました(笑)。

三宅:再生医療のときもそんな感じでしたか?

江崎:ええ。出向先の岐阜県庁から戻ったら、局長に呼ばれて「これからは再生医療が大事だと思う。なんとかしたい」と言われました。「再生医療について何をするんですか?」と聞いたら、やっぱり「それは君、考えてくれよ」でした。(笑)。

三宅:江崎さんはほかの省庁を巻き込んで改革を進めていきますが、最初は対立しているのに、なぜ協力関係に持っていけるのでしょう?

江崎:まず相手を信頼してみることです。相手はその分野のプロなのですから。再生医療の仕事を始めるに当たって、課の職員には、「厚労省は敵ではない。立場と考え方が違うだけの仲間だ」と言ってきました。こちらの接し方で人は変わります。それと「相手のために」という気持ちがないとダメですね。自分のためにという気持ちが強いと、すぐに相手にわかっちゃう。あとは自分の手柄にしないこと。

三宅:相手の側に入り込む、そして連携や融合していくのに秘訣はあるのですか?

江崎:秘訣というわけではありませんが、相手の立場に立つことですかね。私は合気道の師範でもあるのですが、合気道の基本は相手と同じ立場に立つことです。技を掛けるときには必ず相手と身体の軸をそろえるのですが、軸がそろえば力を使わなくても相手を自分の思う方向に動かすことができます。しかも相手は私に動かされたと感じません。

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