【デザインの考察】
ここは好き嫌いが最もわかれる部分だ。評価はいろいろあるようだが、筆者はNA型こそロードスターのアイコンだと考えている。
NA型以降に登場する世界の小型スポーツカーに影響を与えた事実もさることながら、丸型を基調とした各部のパーツ(例/ヘッドライトやテールレンズ)は、人懐っこさがあるというか、小動物的というべきか、じつに愛くるしい。思わず近づき車内をのぞき込みたくなる、そんな衝動に駆られるのがロードスターだ。
スポーツカーなのに愛くるしいとはしっくりこないという向きもあるだろう。しかし、長きにわたり愛される重要なポイントのように思う。
今回の試乗では街中や住宅街も走らせたが、過去のオーナー時代がそうであったように、NA型を見かけた小さな子供たちから手を振られ、また当時を懐かしむ大人からも笑みを返される。
老若男女のハートをつかむ柔和な雰囲気と、オープンカーという軽快な走りを予感させる組み合わせは、この先もマツダの財産になる。マツダには「マツダ史上、最もエレガント」と称された「ルーチェ ロータリークーペ(1969年)」があるが、NA型はそれと並ぶ存在として語り継がれるべき1台だ。
ND型もスタイリッシュな側面では負けていない。NA型に続いて、今回も前衛的な部分で世界中のスポーツカーに影響を与えた。切れ長のヘッドライトにはじまり、ボンネットフードからフェンダーアーチへとつながる抑揚あふれる造形は、アストンマーチン「ヴァンテージ(2018年)」にも通ずる、と個人的に思う。
インテリアにしても、マツダ第6世代商品群のセオリーどおり高品質。デザイナーが格別のこだわりをもって設計したという、ドアパネル上部とダッシュボード左右の小さなパーツをボディカラー化することによって、身体がクルマ全体に包まれているようだ。オープン走行時には街ゆく人からもチラリとそれが確認できる。
筆者はND型のデザインが大好きだ。しかし、「ロードスターのデザインとは何か」と問われれば、迷わず「NA型」と答える。
走りの基本は変わらない
【走りの考察】
丁寧な運転操作を求めること。これがNA型とND型に共通する運転感覚だ。スポーツカーという言葉の響きには、一気にアクセルを踏みつけ、高い速度域からガツンとブレーキを踏み、素早くステアリングを切り込むイメージがつきまとう。こうした荒々しさこそスポーツカーの醍醐味だという声は根強い。
しかし、ロードスターのスポーツ感覚はそれと違う。まずドライバーの運転操作に対してクルマが反応、次にそれを感じたドライバーが必要な操作を上乗せし、さらにクルマが反応して……。このプロセスの繰り返しを、ひときわ大切にしているクルマがロードスターであり、それはNA型とND型に通ずる部分だ。
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