「女おひとりさま」は幾らで介護施設に入れるか 年収800万円でも独身老後は超不安でしかない

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Aさんは「仕事は好きなので、できるだけ長く働きたい」とのことですが、「そうはいっても60歳以降はペースダウンしたい」という気持ちもあります。現在の毎月の生活費は30万円。70歳まで月平均20万円で働けたとしても、今の生活費は出せません。課題となるのは、施設に入るまでの住居の確保と、生活のダウンサイジングです。

Aさんの70歳までの生活に関する不足金を月10万円、その後75歳までの生活費を月25万円と仮定します。すると合計2700万円となり、現在の貯蓄額2000万円ではあと700万円足りません。57歳のAさんにとっては、結構大変な金額です。

それでもAさんは「そろそろ仕事を辞めたいなんて思う気持ちもあったんですが、少なくとも65歳までは今までと同じくらい頑張らなくちゃいけないということですね!」と、吹っ切れたような顔をされました。実際、プロモーションの話もあり、受けるかどうか迷っていたそうですが、もう少し頑張ってみようと気持ちが整理されたようでした。

「ひとりで生きる」計画は「男おひとりさま」も有効

60歳以降も働けば、その分老齢年金も増えます。昭和38(1963)年生まれのAさんには、特別支給の老齢厚生年金が63歳から支給されますが、これは手を付けずに資産形成に回します。そのころの給与額にもよりますが、今回の年金改革法で在職老齢年金の基準が引き上げられたので、Aさんの特別支給の老齢厚生年金はカットされることなく全額受給できる可能性が高くなりました。

つまり、今後Aさんがますます活躍できる場が整ってきたともいえるでしょう。もちろんiDeCoや、つみたてNISAもフル活用です。

Aさんのケースは独身女性でしたが、実は「ひとりで生きること」を前提とした資金計画は、独身男性にも、配偶者がいる方にも有効です。まず「ひとりで完結する」ライフプランが確保できると、パートナーと2人で生きることになった場合でも経済的にはメリットしかありません。「ひとりで生きる」資金計画、参考になりましたら幸いです。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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