「女おひとりさま」は幾らで介護施設に入れるか 年収800万円でも独身老後は超不安でしかない

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Aさんは、ご両親の老後の暮らし方から自分自身の老後をイメージすると、介護付き有料老人ホームに入居するという選択肢もありだと思ったようです。そこで、それに向けてお金をどう賄うかを考えてみることにしました。具体的には、75歳をメドに介護付き施設に入るために「入居一時金600万円と月の費用25万円が安心して工面できる資金を貯める」というゴール設定をしました。

人生の最後まで発生する毎月の費用は、終身払いが保障される公的年金を充てたいところです。Aさんの老齢年金は、ねんきん定期便によると月15万円。これでは足りません。そこで、年金の受給開始の繰り下げを考えました。70歳まで繰り下げる場合、年金額は1.42倍に増額され、Aさんは月21万3000円を受け取れます。

また、今年5月に成立した年金改革法により、2022年4月以降75歳まで繰り下げが可能になりますが、そうした場合、年金額は1.84倍となるので、Aさんは月27万6000円の年金収入を得られることになります。これで、施設の毎月の費用25万円も賄えることになります。

年金繰り下げ受給の「損得勘定」は意味がない

ただ、Aさんは年金の繰り下げ受給に不安もあるようでした。

「年金の受給開始年齢は損得の分岐点を考えなければいけないと思いますが、75歳という遅い年齢まで繰り下げるのは本当に得なのでしょうか」とAさん。

筆者は「何歳まで生きれば得だとか損だとかよくいわれますが、それは何歳で死んだら得だ、損だという言葉の裏返しで、そもそも損得で選ぶものではありません」とお答えしました。実際、日本の年金制度は、平均寿命まで生きれば、繰り上げようが繰り下げようが、受給総額が同じになるように設計されているのだそうです。

Aさんは「もし、受給開始を75歳まで繰り下げたのに、すぐに亡くなってしまったら、年金はそれっきりですよね」とも言います。確かに、亡くなってしまえば年金は受給停止です。

一方で、年金というのは、必要になったとき、いつでも受給を始めることができるのです。月25万円を下回るような費用面で折り合う施設が見つかれば、70歳から年金を受け取ることもできるでしょう。また75歳まで待って受け取る際に、70歳時点の年金額にさかのぼり、75歳になるまでの5年間分を一括で受け取って、そこから70歳時点での倍率の年金を終身で受け取ることもできます。

もちろん、75歳から1.84倍に増額された年金を終身で受け取ることもできます。「日本の年金制度は自由度が結構高いんですよ」とお話をすると、Aさんは少し安心されたようでした。

施設の毎月の費用を賄う算段がつきました。入居金の600万円は会社の退職一時金で賄えそうです。これで「75歳からの生活設計」ができました。残るは、「60歳から75歳までの生活をどう賄うか」です。

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