高輪ゲートウェイ、「ロボットの駅」に大変身 コロナ禍で「人手不足対応」以外の必要性も

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ロボットの活躍の場は、駅にとどまらない。「将来は当社の駅で本格採用したいと考えているが、むろん駅以外での導入も可能だ」(佐藤部長)。空港、物流施設、オフィスビルなど、ロボットの出番はたくさんありそうだ。だとしたら、高輪ゲートウェイでの実証実験を聞きつけて、ロボットの導入を検討している企業などがその働きぶりを見学しに訪れるかもしれない。2024年度にオープンする周辺のオフィスビルや商業施設にもこうしたロボットがたくさん導入されるかもしれない。それだけに実証実験を行うメーカー側にも力が入る。

今回の報道公開では、ロボットのほかに2種類のパーソナルモビリティ(1人乗りの移動支援機器)も紹介された。トヨタ自動車の立ち乗り型「歩行領域EV」とパナソニックの車いす型「WHILL NEXT(ウィルネクスト)」だ。

これらは非公開エリアで実証実験が行われるため、一般の人の目に触れる機会は少ないが、同駅には誰もが未来を体感できる設備がいくつもある。たとえば、駅ナカのコンビニ「TOUCH TO GO(タッチ・トゥ・ゴー)」は、店舗内で客がどの商品を手にしたかをカメラやセンサーで検知し、交通系ICカードSUICA(スイカ)などで決済する無人AI店舗。決済エリアに到着するとタッチパネルに商品と購入金額が表示されているさまはまさに未来のコンビニだ。

「コンビニ以外の使い道にも期待している」と、JR東日本の深澤祐二社長は意気込みを述べる。人手不足に悩む小売店や飲食店向けに1〜2人の人件費程度で利用できる月額サブスクリプションモデルで展開したいという。

経路案内や周辺の観光案内を行う「AIさくらさん」も高輪ゲートウェイの名物となった。利用者との会話を重ね、学習することでAIの能力が向上するという。数カ月後に同駅を訪れて“さくらさん”に話しかけてみると、会話の上達ぶりに驚かされるなんてこともあるかもしれない。

コロナで高まる「非接触」ニーズ

深澤社長は、品川再開発について「変化し続ける未来の街というコンセプトで取り組んでいる」と話す。したがって、コロナによる社会変容についても柔軟に対応できるという。JR東日本は、人口減少や環境意識の高まりといった将来を見据えて「変革2027」という中期経営ビジョンを策定し、それに向けてさまざまな対策を講じている。

JR東日本の深澤祐二社長(撮影:尾形文繁)

その意味では、軽食・飲料の搬送ロボットや無人AI店舗は、本来は人手不足に対応するために開発したものだが、コロナによってソーシャルディスタンスの必要性が高まり、非接触というニーズが新たに加わった。「変革2027というグループ経営ビジョンを策定したが、コロナの影響によって早く実行しないといけなくなった」(深澤社長)。

今回公開されたのは、軽食・飲料搬送ロボット、消毒作業ロボット、手荷物搬送ロボットだが、3月の同駅開業時には案内ロボット、警備ロボット、広告ロボットなどの試行導入の様子が公開された。そう考えると、高輪ゲートウェイ駅は最先端のテクノロジーの実験場といえる。

コロナ禍が落ち着いたら、ぜひ高輪ゲートウェイ駅に足を運んで「未来の駅」を体感してみてはいかがだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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