東武、「SL2機体制」で試される日光戦略の勝算 「SL大樹」日光へ、鬼怒川線は来夏から毎日運行

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SL大樹は3年前の2017年8月10日に営業運転を開始した。名称の「大樹」は江戸幕府を開いた徳川家康をまつる日光東照宮にあやかって、征夷大将軍の唐名から採用された。ヘッドマークは徳川家の「三つ葉葵」の紋とC11形の3つの動輪を掛け合わせたようなデザインになっている。

現在使用するSLは1941年製の「C11形207号機」。2016年にJR北海道から借り受けた。長く北海道で活躍して1974年にいったん廃車となったが、動態保存機として復活し「SLニセコ号」などで人気を呼んだSLだ。「カニ目」と呼ばれる離れた2つの前照灯が霧の多い北の大地出身であることを物語っている。

編成はSLを先頭に、自動列車停止装置(ATS)を備えた車掌車、国鉄時代の14系客車3両、最後尾で支援するディーゼル機関車(DL)の6両で構成。東武の「SL復活運転プロジェクト」には全国各地の鉄道会社が協力しており、車掌車はJR貨物とJR西日本、客車はJR四国、DLはJR東日本から譲り受けた。

設備面では、終着駅でSLの進行方向を変える転車台をJR西日本から譲渡された。発着駅となる下今市駅と鬼怒川温泉駅にある転車台は、それぞれ長門市駅(山口県)と三次駅(広島県)から運ばれた。機関士・機関助士や検修員は大井川鉄道など、SL運行の知見がある各社で養成した。

真岡鉄道のSLも仲間入り

全国の鉄道会社から車両や設備、ノウハウを集めて実現した復活運転だが、今年7月31日にまた仲間が増えた。同社の南栗橋車両管区にSL「C11形325号機」が到着し、報道関係者に公開された。

南栗橋車両管区に到着したSL「C11形325号機」=2020年7月(撮影:尾形文繁)
新たに導入したディーゼル機関車「DE11 09」(右奥)と客車「スハフ14 501」=2020年7月(撮影:尾形文繁)

325号機は茨城・栃木両県にまたがる真岡鉄道で活躍。只見線などJR東日本管内に“出張”する機会も多く、各地で人気を集めていた。が、維持コストがかさむことから売却が決定。2019年3月に実施した一般競争入札で東武が落札した。JR東日本の大宮総合車両センターでの検査の後、栗橋駅のJR・東武間の連絡線を経由して南栗橋へ運ばれた。今後、改造工事や乗務員の訓練を経て今年12月にデビューする予定だ。

325号機のほか、JR東日本からDL「DE11 09」とJR北海道から14系客車「スハフ14 501」1両も新たに導入した。大樹は現在、特急のグリーン車座席を使用した「ドリームカー」を含む5両の客車を組み変えながら運用しているため、もう1両ある車掌車と合わせ、客車3両のSL列車を2編成つくることができるようになる。

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