東武、「SL2機体制」で試される日光戦略の勝算 「SL大樹」日光へ、鬼怒川線は来夏から毎日運行

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東武は近年、SLプロジェクト以外にも鬼怒川線の活性化に力を入れてきた。

東武ワールドスクウェア駅に到着するSL大樹(記者撮影)
鬼怒川温泉駅の転車台は多くの観光客でにぎわう(記者撮影)

2017年4月には都心から同線を経て会津田島までを結ぶ新型特急「リバティ」を投入。同年7月には、世界の名建築をミニチュアにしたテーマパーク「東武ワールドスクウェア」の最寄りに新駅を開設、さらに今年6月のダイヤ改正で全列車が停車するようにした。SL大樹の唯一の途中停車駅でもある。1993年に開業した同園は最近、SNS映えするスポットとして再注目されているという。

同社によると、SL大樹の運行開始からこれまで約24万人が乗車した。運行日には沿線に見物に来た家族連れの姿が目立ち、鬼怒川温泉の駅前広場にある転車台はカメラを構えた観光客でにぎわうスポットとなっている。転車台への入線時刻はホームページ上で公開していて、乗車したり、ホームに入場したりしなくてもSLの音や匂いを間近で楽しめるのが売りだ。

だが、SLの人気を支えているのは東武の関係者ばかりではない。

沿線を挙げて盛り上げ

日光市の観光、商工関係者や各地区の自治会などは「いっしょにロコモーション協議会」を設立。「『SL大樹にみんなで手を振ろう』プロジェクト」といった住民参加型の企画を展開している。

乗客をもてなす「SL観光アテンダント」を務めるのは観光協会のスタッフだ。沿線案内のほか「沿線から地元の方が手を振ってくれています。皆さまも元気よく手を振り返してみてください」といったアナウンスで車内を盛り上げる。

今回の東武日光への乗り入れは、日光市観光協会や日光温泉旅館協同組合といった地元の団体や、二社一寺(日光東照宮・日光二荒山神社・日光山輪王寺)などが一緒になって要望書を提出したことがきっかけで実現した。

観光客だけでなく沿線の多くの人々の期待を乗せるSL大樹。コロナ禍で全国の有名観光地が軒並み大ダメージを受ける中、大手私鉄で唯一、SLを沿線活性化の目玉に据える東武の独自戦略が本領を発揮できるかが試されている。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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