コロナ不安を増幅させる一筋縄でいかない構造 情報の氾濫に政府やメディアはどう対応したか
多すぎる情報が人々を不安にする
――『コロナ危機の社会学』では、新型コロナ感染拡大の対処において、政府が民意に「耳を傾けすぎている」という指摘がありました。
西田 亮介(以下、西田):はい、政府は1、2月あたりまで従来設けられていた新型インフルエンザ等特措法に基づく政府行動計画に沿って対処していたのですが、政府が計画から外れて裁量で対処するにつれてわかりやすい「民意」に迎合し、場当たり的な対策を繰り返すようになりました。
具体的には、マスクの配布や一律10万円の特別定額給付金などです。効果が判然としていないにもかかわらず、です。その背景には、各社世論調査で明らかになっているとおり、内閣支持率の低下があります。桜を見る会や検察官の定年延長などの問題がノイズのように重なって政治に対する不信感を引き起こした結果、政府はなりふり構わなくなっていきました。
一方でネットなどに表出する「民意」ですが、本当の情報と間違った情報が混じり合っていることから、正しさに起因していないところがあります。新型コロナ対策に関する情報については、WHOが早い段階からインフォデミック対策が重要だと呼びかけていました。インフォデミックとは、情報(information)と感染症拡大(epidemic/pandemic)を合わせた概念です。正確である、ないにかかわらず、新型コロナに関する情報量の多さそのものが人々を不安にするので、情報過剰性に対するリスク/クライシス・コミュニケーションが求められます。
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