インスタグラムが「稼げる場所」に変貌する理由 広告収入に投げ銭、中小業者も集客に活用

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――飲食だけでなく、アパレルなどのネット通販をフェイスブックやインスタグラムで可能にする「フェイスブックショップ」(ショップ作成機能)が国内で始まりました。ネット通販の戦略をどう描いていますか。

ユーザーの観点でいうと、より買い物をしやすくしたい。そして業者側の観点からいうと、ネット通販の仕組みを簡単に構築できるようにしたかった。フェイスブックショップを作ると、フェイスブックでもインスタグラムでもユーザーが利用できる。それぞれの異なるコミュニティとかかわりを持てる。

アメリカで試験的に始まった「ライブショッピング」の例。インフルエンサーなどがライブ配信で商品を紹介しながら、画面下部に商品情報が表示され、そこから購入できる(画像:Instagram)

アメリカでは試験的に、ショッピング広告から直接商品を購入できる機能のほか、「ライブショッピング」という新機能もアメリカで試験的に始めている。業者やクリエイターがライブ配信をしながら商品を披露する場だ。消費者はリアルタイムでそれを購入できる。買い物の体験をより簡単に、シームレスにしていく取り組みの一環だ。

ただスモールビジネスは必ずしもテクノロジーに詳しいとは限らない。こうした機能をスモールビジネスに使いこなしてもらうために、オンラインセミナーなどを開催し、ビジネスをデジタル化する支援をしている。また、総額1億ドルの中小ビジネス助成プログラムも発表した。まもなく日本でも申し込みの受付を始める予定だ。

インスタグラムのビジネスモデルが変わる?

――ユーザーからすると、通販サイトとインスタグラムでの購買体験はどう異なるのでしょう

ビジュアルでさまざまなものに触れられるインスタグラムでは、ユーザーの9割がビジネスアカウントをフォローしている。かっこいいと思う製品を探していると、ビジネスアカウントだけでなく、クリエイターや友人のアカウントからも見つかる。ただそれを詳しく調べたり、購入したりするには、リンクを見つけるか、検索をしなければならず、やりづらいという声が多かった。

7月末から日本で始まった「インスタグラムショップ」機能の画面。ショップを作成した業者の商品一覧をテーマごとに見られる(画像:Instagram)

気になった商品があれば保存し、検討に時間をかけ、またあとで戻ってきたい。あるいはすぐに購入したい。こうした顧客体験を実現するために、インスタグラム上でのショッピング機能が必要だった。通常のネット通販では、何か欲しいものが決まっていて、検索し購入するが、インスタグラムは新しいものを発見する可能性を広げる。

――アメリカで始まった機能は日本にも導入されるのでしょうか。

新機能はアメリカ以外に広げる前に、試験を重ね、改善していく。時間軸は公表していないが、日本を含む他国に広げていきたいのは確かだ。そのために各国で必要なパートナーシップを築きながら、適切なインフラを整備していきたい。

――これまでインスタグラムの収益源は広告収入でした。今回さまざまな新機能の提供が始まったことで、収益構造も大きく変わりそうです。

将来においても、われわれの第一の収益源が広告であることは変わらないだろう。ショッピングの事業では、インスタグラムで直接購入できる機能(現在はアメリカのみ)で業者から少額の手数料を取っているが、利用しているのはまだ数百の店舗だ。しかも(自社の収益にするというよりも)開発や取引にかかるコストを補うのが目的だ。ライブ配信におけるバッジはクリエイターと収益を分け合うが、まだまだ試行段階にある。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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