相鉄・東急直通線工事、判明した「陥没」の要因 トンネル掘削時に土砂を過剰に取り込んだ
検討委の龍岡文夫委員長(東京大学名誉教授)によると、シールドトンネル工事による陥没は、切羽と呼ばれる掘削面の上が崩れて地表が陥没するケースが一般的だ。だが、2回の陥没はどちらもすでに掘削が終わった区間で起きた。
当初から委員の間では、陥没現場の地下に空洞があったとの見方が出ていたものの、空洞ができた理由については意見が分かれていた。6月24日に開いた最初の検討委会合では「以前から(陥没現場の地下に)空洞があったのではないか」との意見もあったという。
だが、その後地質調査が進むにつれ、すでに掘削したトンネルの左右と、これから掘削する前方の地盤は異常がない一方で、トンネルの真上に位置する「上総層」と呼ばれる砂を多く含む地層は傷んでいることが判明。数値が高いほど地盤が固いことを示す「N値」は本来100以上のところ、トンネルの上は50以下と弱くなっていた。
これらの分析から、検討委は工事以前から空洞があったとはいえないと判断。シールドトンネル工事が陥没を招いたとの結論に達した。
現場付近の地盤について龍岡委員長は、固い泥岩層が薄く砂層が主体で「非常にいやらしい地盤」と指摘。砂層は地中で安定した状態なら非常に固く強いものの、空隙が生じて水にさらされると流れる性質があるといい、空隙が広がってバランスが崩れ、崩落したのではないかとの見方を示した。
土砂を多く取り込みすぎた
工事記録の解析では、陥没地点付近の工事の際に本来掘削する分よりも多くの土砂を取り込んでいたことが判明した。
龍岡委員長によると、新横浜トンネルのシールドトンネル工事は泥水を送り込んで掘削面を安定させながら掘り進める「加圧泥水式」という方式で、掘削した土砂は泥水とともに排出される。送り込んだ泥水と戻ってきた泥水の量や含まれる土砂の密度を比較することで、どれだけの土砂を取り込んだかがわかるという。
この工事記録を分析した結果、陥没現場付近の長さ10~14mにわたって少しずつ余分に土砂を取りすぎていたことが判明。送り込む泥水に含まれる土の密度が十分でなかったために掘削面が安定せず、本来掘るべき量以上に土砂を取り込んだとみられる。また、過剰に取り込んだ土砂の量は陥没現場の空洞の体積とおおむね一致した。
土砂を取りすぎていたことが工事中に判明しなかった点について、龍岡委員長は「突然大崩壊が起きたわけではなく、限定的な量の(土砂の)取り込みを連続して行っていたので、とくに異常はないと判断したようだ」と説明する。
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