相鉄・東急直通線工事、判明した「陥没」の要因 トンネル掘削時に土砂を過剰に取り込んだ

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また、土砂を取り込みすぎた場合は「グラウト」と呼ばれる、セメントをペースト状にしたものを注入して隙間を埋めるが、陥没現場付近では結果的に注入量が足りていなかったこともわかった。一般的に充填する量の2倍程度を注入していたものの、龍岡委員長は「今から見ればもっと入れるべきだっただろう」と指摘する。

6月30日の陥没現場。同日夕方には路面がほぼ埋め戻されていた(記者撮影)

本来掘るべき量を上回る土砂を周囲から取り込んでしまい、さらに隙間へのグラウトの充填も足りていなかったことで、空洞が生じて陥没に至ったとみられる。

施工管理が適切だったかどうかについて、鉄道・運輸機構は、検討委から具体的な陥没発生のメカニズムや再発防止策などの最終的な報告を受けたうえで判断したいとの意向を示す。ただ、委員の間では「より注意すべき場所だったものの、作業のレベルに問題があったわけではない」という見方が多いようだ。

一方、今回の陥没事故は、複雑な地盤でのトンネル工事にさまざまな知見を残すことにもなりそうだ。「事故について詳細に解析する機会はまれ。今回の事象を踏まえ、今後は1ランク上がった管理方法が普及してもいいのではないか」と龍岡委員長は話す。

工事再開はいつになる?

鉄道・運輸機構は2回の陥没現場を含む環状2号線の約500mの区間で、地盤の調査と補強の作業を続けている。現在は79カ所で地盤を補強するための充填注入を行っているといい、担当者は「少しでも悪いところがあれば徹底的にやっている」と強調する。

新横浜トンネルの工事は1回目の陥没事故が起きた6月12日以来中断しており、約1カ月半ストップした状態だ。相鉄・東急直通線の開業時期への影響について、同機構東京支社の五十嵐良博工事部長は「工事を再開できる時期が明確になった段階で、どの程度の期間が必要かを検討したうえで工程管理を進めていく。軌道や電気などの設備関連工事は縮められる要素がある。今は(従来の)目標設定のままで進めている」と話す。

検討委は8月2日に再度会合を開き、具体的な陥没のメカニズムと再発防止策を提言する予定だ。同機構によると、工事の再開は検討委から対策などの提言を受け、関係各所への説明などを行った後になるという。道路の通行者や地域住民の不安感を払しょくするためにも、そして予定どおりの開業を目指すうえでも、まずは有効な再発防止策の実施が極めて重要だ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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