在宅生活で売れまくる「ゲーム用家具」はコレだ 室内テントは売り上げ3倍に

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同社は1997年に創業した、工場を持たないファブレスメーカーだ。現在アウトドアブランドを中心に5ブランドを展開している。2008年に誕生したバウヒュッテは、実は当初オフィスチェアブランドだった。

当時はまだネット上でオフィス家具が気軽に買える時代ではなかったため販売は好調だったそうだが、2014年に増税があったほか、同時期に中国の工場から直接ネット上にオフィスチェアを出品する業者が増え始めたことで売り上げが急速に落ち込んだ。

子ども時代の夢、「秘密基地」を実現

ビーズ株式会社「バウヒュッテ」プロデューサーの川瀬隼利さん(写真提供:ビーズ株式会社)

一方、川瀬さんが当時担当していた別ブランドで「セーラー服のパジャマ」などエンターテインメント性の高い商品が支持されていたこともあり、ここで得たノウハウを生かし、バウヒュッテをリニューアルすることになったという。そして、プロデューサーに就任した川瀬さんがゲーム好きだったこともあり、この「ゲーミング家具」シリーズが生まれた。

コンセプトは「デスク秘密基地化計画」だという。その発想の原点は、秘密基地に憧れたという川瀬さんの小学生時代。ワクワクしながら段ボールを使って学習机を改造したりしたという。

また、悪さをして狭い場所に閉じ込められたときに、「居心地のよさ」を感じたそうで、それ以降、押し入れで勉強したり、本棚で囲ったコタツでネットゲームにハマったりと、閉所に居場所を求める暮らしを送ってきた。

前述の「ぼっちてんと」が顕著だが、同ブランドには「囲う系」の商品やレイアウト提案が多い。それはこの「閉所にいる安心感」の再現を大きなテーマとしているからだ。「子どもの頃に好きだったことや体験、あるいは当時やりたくてできなかったことを大人の解釈で企画・商品化している」(川瀬さん)。

そんな子どものロマンが詰まったシリーズ展開が当たり、現在、オフィスチェア専門で展開していた時と比べると、売上げは10倍以上に伸びているという。

ちなみに外にオフィスを借りなければならないほど住宅環境の悪い筆者は、「高さ調節できて折りたためる、でもガタつかない丈夫なデスク」といった商品開発をこっそりダメ元でお願いしたが、都心の狭小住宅暮らしのゲーマーに応える商品はまだまだ開発余地があるのではないだろうか。あるいは都心を捨てて地方に移転したオフィスで役立つ、既存商品を駆使した画期的なレイアウト提案なども見てみたい。

あくまでゲーマー向け家具であることは承知しているし、個人の嗜好が細分化されている時代の中で理屈ではない「童心」に訴えかけるブランド展開は今後もコアなファンを惹きつけていきそうだが、まだまだ続きそうなテレワーク需要に同社がどう切り込んでいくのかも気になるところだ。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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