日本に足りない「グリーンリカバリー」の意識 気候変動イニシアティブの末吉代表に聞く

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――2018年にJCIを設立したきっかけは何だったのですか。

2015年に採択されたパリ協定のもとゼロエミッション(温室効果ガスの実質的な排出ゼロ)に向けて、世界中の多くの企業や地方自治体が前に進む姿を見せ始めた。

すえよし・たけじろう/1945年生まれ。1967年東京大学卒業後、三菱銀行入行。日興アセットマネジメント副社長などを経て、2003年国連環境計画(金融イニシアティブ)特別顧問就任。現在、気候変動イニシアティブ、世界自然保護基金(WWF)ジャパン会長、自然エネルギー財団副理事長などを務める。(撮影:今井康一)

だが、日本政府は、積極的な姿勢を見せなかった。ビクとも動かなかった、といっても過言ではない。もっといえば、日本では気候変動問題に対して先進的な取り組みを行っている企業や自治体が、政府に足を引っ張られている。

そういったこともあり、アメリカの「We Are Still In」(パリ協定への賛意を示すキャンペーン)と同様のネットワークが日本にもあってもいいのではないか、と考えて各企業に呼びかけたのがJCIの始まりだ。

――JCIの賛同団体はどのようなところが多いのでしょうか。

参加者は「われわわれはパリ協定が求める脱炭素社会に向けてのフロントライン、先頭に立って大きな努力をしていきます」という宣言に署名をする。

ソニー、リコー、日立製作所といった大企業もいれば、商工会連合会も参加している。東京大学、京都大学やNGO(非政府組織)、消費者連合会にも入ってもらっている。

メンバー数にすると、2800万人ぐらいになる。当初は30から50の参加団体があれば、御の字だと考えていた。だが、設立してすぐに100を越え、間もなく500(7月27日時点で492)になる。発足時から参加が途絶えることなく続いている。国内のビジネスや行政の世界で、気候危機をしっかり考えていく必要のあることが認識され、日本社会の底流になってきていると強く感じている。

ゼロエミッション時代の経済をつくる

――一方、ヨーロッパのグリーンリカバリーの意識はどれくらい高いのでしょうか?

欧州委員会は2019年12月に発表した成長戦略「欧州グリーンディール」の中で、「2050年までに欧州大陸を世界初となるゼロエミッションの大陸にする」と言っている。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

そのために欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、「10年間で1兆ユーロ(120兆円)もの投資をする」と発言している。このグリーンディールをグリーンリカバリーの柱にすべく、ヨーロッパは動き始めている。

コロナ危機で縮小した経済を回復していくプロセスは、従来の経済を100%コピーするような姿勢ではいけない。簡単に言えば、コロナ禍を経て、ゼロエミッション時代のビジネスや経済をつくらなければならない。ある意味で手間暇がかかるので、一般的に産業競争力は瞬間風速的には落ちるかもしれない。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「ゼロエミッションの取り組みと企業の競争力の関係」「日本政府の気候変動問題に対する姿勢」などについても語っている。
大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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