ところが、2019年の全国ハイヤー・タクシー連合会の統計調査を見ると、大阪の推計収入は412万円となり、全国推計収入の360万円を上回っていた。それだけではなく、東京、静岡、神奈川に続く全国4位の位置につけるまでに伸びを見せているのだ。
もっとも、勤続年数は当時と変わらず7.3年で、全国平均を3.2年も下回っている。あくまで推計統計によるものではあるが、大阪のドライバーたちの待遇が改善されている1つの指標にはなるだろう。
近年の大阪のタクシー利用者の推移を聞くと、「悪くはない」と今野さんは話す。その理由は、インバウンドによる観光客の増加が関係している。
関西を訪れる外国人旅行者の特徴として、団体客でのバス旅行だけではなく、少人数グループによる個人旅行客が多いことが挙げられる。個人旅行の外国人観光客の増加により、恩恵を受けたドライバーは多いという。
「台湾や香港の個人旅行の方は客層もよくて、日本人のお客様と時間帯が被らないので、めちゃくちゃありがたいんよ。短期旅行の方だと、大阪城や海遊館、通天閣などをぐるっと回る方もいるし、ホテルからUSJまでという人も多い。毎年1、2月や7、8月などは感覚的に1日1組は乗せてたかな。
彼らは兵庫や京都じゃなく大阪に泊まるから、ホテルの近くで待っていたら拾えることも多かった。それも新型コロナウイルスの影響でパタッと止まってしまったのが痛いけど……」(今野さん)
大阪タクシーで意外と大事なこと
目的地が近づいたこともあり、最後に大阪ならではの“おもろい”経験の有無を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「大阪の深夜利用の方は、僕らドライバーにお土産を渡してくれる人が多いんよ(笑)。たぶん家族へのお土産やアフターで用意していたものの残りなんでしょうが、お寿司とかお弁当とかちょっといいおにぎりとか、たこ焼きなんかの食べ物が多いかな。
だから私なんかはお返しを想定して、コーヒーやアメちゃんを常備している(笑)。これが結構喜ばれることが多くて、そういう人はまた利用してくれたり、迎車で呼んでくれたりもするから、大阪では意外と大事なことかもしれへんわ」
料金を支払い終えると、のどアメを2つ渡された。こんなご時世やからのどには気をつけて、という言葉を添えると、今野さんは車を発車させた。車中で交わされた少しぎこちない関西弁の余韻は、心地よさが勝った。
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