大阪「500円タクシー」を襲うコロナ禍の荒波 流転タクシー第4回、格安運賃の偽らざる現状

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「あくまで個人的な感覚やけど、大阪でタクシードライバーやっている人間て、よその土地からの流れ者が多いんですわ。九州とか中国地方とか、とくに四国出身者なんかは多いけど、大阪より西から来た人間が集まる場所でもある。中には元ヤクザとか、借金して逃げてきた人とか、元会社社長とかもいて、バラエティに富んでるわ。でもそういう人間も、みんな関西弁しゃべろうとするのは面白かった。そういう土地は、たぶん大阪だけなんちゃうかな」

冒頭に述べたように、格安料金の導入など、安さをウリにするタクシー会社は多い。乗客にとっては利用の際にメリットはあるが、ドライバーにとってはこの“大阪制度”はどう映っているのか。

「仮に短距離で安い金額設定をすることで、利用者の母数が増えるのであれば、それはタクシーの本来の役目である“足”として機能していることになる。ただ、現状は安くすることで利用者が増えたとは思えないから、そうなると少ないパイを安い値段で奪いあってるだけ。そもそもですが、利用者に対してタクシーの台数が多すぎる。そんな背景もあり、私らからしたら決してよい待遇を受けているとは思えないんですわ」

2014年の改正タクシー適正化・活性化特別措置法(特定地域・準特定地域タクシー事業適正化・活性化特別措置法)の施行で、タクシーが多い地域では国の定めた範囲内の初乗り運賃(公定幅運賃)が義務化された。

そんな中でも、公定幅を下回る格安運賃で運行してきた大阪のタクシー会社「ワンコインドーム」は、国に値上げを強制しないよう求める訴訟を行い、勝訴している。現在に至るまで、少なくとも2社がワンコインでの営業を続けていることも、大阪のタクシー業界の特殊性を表すエピソードといえるだろう。

大阪のドライバーは儲かっていないのか

長距離割引に関しては、より収入に直結する面が大きい。この独自制度はドライバーたちの食いぶちを削っている、と今野さんは指摘する。

「ドライバーにとって、いちばん儲かるのが長距離移動なんです。基本的に利益は長距離で取るというのが私たちの考え方。電車がある時間帯は、よほどじゃないとタクシー利用はしないでしょ。だから深夜帯でいかに長距離のお客様が捕まるかで収入は全然違うわけ。

深夜の人はほかに手段がないから料金が利用の決め手にはならないし、接待の方もそう。だから、長距離割引はあくまで会社都合の制度であって、ドライバーにとっては単純に収入が減るだけなんですわ。郊外の遠方が行き先の場合は、帰りは利用者がいないことがほとんどで、決して効率がいいともいえないですから」

大阪は乗車料金も日本一安いかもしれへんけど給料もいちばん安いで、と今野さんは自嘲ぎみに笑う。だが、大阪のタクシー業界の給与が一概に安いとも言い切れない。ここで給与面に関する興味深いデータを紹介したい。

タクシー白書シリーズ(東京ハイヤー・タクシー協会)によれば、2000年の大阪のタクシードライバーの年間推計収入は316万円。全国トップの東京が443万円なのに比べると大きな開きがあり、全国平均の338万円をも下回っている。勤続年数も7.3年と、全国平均の9.5年に及ばなかった。

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