国内外でウイルスを広げている「米軍」の怠慢 沖縄だけじゃなく、世界で問題になっている
「これはたいへんな課題だ」と、シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」で非常勤の上級研究員を務めるジェイソン・デンプシー氏は話す。「ウイルスを国内でも制御できていない以上、極めて重要性の高い任務を除いてはアメリカ軍の展開を歓迎しない国も出てくるだろう」。
いろいろな意味で、アメリカ軍内部の感染急増は、ロックダウン(都市封鎖)に疲れ、日常を取り戻そうとしているアメリカ全体の状況を反映している。国防総省によると、感染件数は7月20日時点で2万1909件と、6月10日時点の7408件から大幅に増えている。3月以降、空母「セオドア・ルーズベルト」の水兵を含む3人の軍人が死亡している。入院した軍人は440人を超す。
アメリカ軍の訓練基地に、ソーシャルディスタンスの空間はほとんど存在しない。兵舎はぎっしり詰め込まれ、訓練はつねに過酷だ。開店中のバーやその他の社交場が隊員を招き寄せる。兵士らは、このような環境で海外派遣の準備を進めている。
集団感染の「完璧な条件」がそろう
「密な環境で若者と年配の世代が共に時間を過ごすアメリカ軍の基地では感染症が広がりやすい。集団感染が燎原の火のように燃え広がるのに完璧な条件がそろっている」。こう指摘するのは、保健政策を研究するダートマス大学タック経営学大学院のリンジー・ライニンガー教授だ。
「残念ながら、密な環境、年齢構成からして基地の集団感染リスクは高い。そして、基地の従業員の多くが地元住民であるため、基地の集団感染はいとも簡単に地域の集団感染に発展しうる」
先日行われた電話記者会見で陸軍のライアン・マッカーシー長官は、大規模な歩兵訓練校を抱えるフォート・ベニングとミズーリ州のフォート・レナード・ウッドの感染急増に言及し、基礎訓練施設の再開を急ぎ過ぎたか、適切な感染防止策をとらなかったツケが軍に回ってきている可能性を認めた。
マッカーシー氏によれば、軍は検査ルールを変更するか、海外配属前に実施される14日間の隔離期間を延長するか、検査の頻度を上げるかどうか、検討を進めている最中だという。
「私たちは事態をとても重く受け止めている」と、在韓アメリカ軍のエイブラムス司令官はアメリカ軍向けに放送されている韓国のAFNラジオ番組内で語った。