お題目化した「地球温暖化やLGBT」は不毛だ ベニオフCEOが悩む「高層ビルとホームレス」

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彼らはあと10年もすれば、中高齢に仲間入りするという状況ですが、社会問題としては、ほとんど無視されています。ネット上では「キモくて金のないおっさん問題」とも呼ばれているのですが、弱者として認定してもらえない人たち、これは非常に根深い問題でしょう。

その点、ベニオフは、リアルな社会問題と対峙することが信条の経営者とも言えます。真に社会と関わり、社会貢献するとはどういうことなのかを丁寧に考え直した人物でもあるでしょう。

求められる「ノブレス・オブリージュ」

ハワイには血縁関係のない人をも含めた拡大家族のようなものを意味する「オハナ」という概念がありますが、ベニオフはこれを用いて、会社内外の人を含めたかなり大規模な合宿研修を行ったり、従業員のためにフィットネスやヨガの教室に助成を行ったりしています。

日本でも、健康経営という言葉が広まってきましたが、健康とウェルネスを最優先事項として、お金をつぎ込み、それによって生産性を上げていくという発想です。

痛快なのは、彼がその一方で「企業文化とは何か」ということを考えていて、「それってグルメな食事と卓球台ではない」ということも言っているところです。

大抵は「企業文化」といえば、グーグルキャンパスのようなものをイメージして、すぐレストランやキッチンスタジオを作ったり、ダーツを置いたりしたがります。企業ロゴの前でみんなで笑顔で写真を撮ったりもしたがりますね。でも、文化ってそういう表層的なものではないはずです。

ベニオフが考えている企業文化とは、豊かでウェルネスな会社だからこそ持たなければならない社会的責任、いわゆる「ノブレス・オブリージュ」のような思想に近いでしょう。

身分の高い者は、それに応じて果たさなければならない社会的責任や義務があるという考えですが、これを言うと、多くの人は、すぐ貧乏人と金持ちを対比して、そこに対立構造を持ち込もうという発想になり、「そんなことは金持ちの道楽だ」と怒りがちです。

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