お題目化した「地球温暖化やLGBT」は不毛だ ベニオフCEOが悩む「高層ビルとホームレス」

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19世紀のイギリスの小説家チャールズ・ディケンズは、「望遠鏡的博愛」という言葉を残しています。当時のヴィクトリア女王は、遠いアフリカでの慈善事業に熱心だったけれど、足元のロンドンには路上生活者があふれかえっていた。

それを「あなたの博愛は、望遠鏡で見ているようなものだよね」と言ったわけです。足元のホームレス問題を放置して、地球温暖化を叫ぶというような姿は、この話と非常に似ていますよね。

そんな中、GAFAに並ぶ巨大企業セールスフォースのCEOであるマーク・ベニオフが、正面からホームレス問題に取り組んで、しかも、自分たちに課される税金を0.5%上げて、ホームレス向けの住宅やサービスを拡充するという法案を後押しした。これは非常に希有な話ですし、すばらしいことです。

「選ばれた弱者問題」

『トレイルブレイザー』には、61階建てのセールスフォース・タワーの上では、エスプレッソをすすりながらピアニストの音楽を楽しむという雲の上の世界があるのに、その下の歩道には、数千人のホームレスが物乞いをして、ゴミ箱をあさっているという現実が描かれています。

こういったことは社会現象としてはよく語られますが、シリコンバレーの経営者本人が書くというのは本当にすごいことです。

LGBT、BLM、地球温暖化、ホームレス、これらは同じ社会問題として扱われているようでいて、そうではない。「きれいな弱者」「きたない弱者」といった言葉もあるように、弱者の選別が行われているのが現実です。

日本でも、同じような構造がたくさんあります。僕はそれを「選ばれた弱者問題」と呼んでいます。

LGBTの話やフェミニズムの話はすぐ語られるのに、実は今の日本には、マジョリティーである30~40代の男性の多くが非正規化していて、結婚できず、就職もできないまま中年になっているという大問題があります。

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