突然「内定取り消された」学生が知るべき対応策 2021年卒の学生の間には不安が広がっている
「内定」は、雇用契約自体は成立しているわけですから、内定取り消しは、法的には解雇に準ずるものとして取り扱われます。すなわち、内定取消無効の訴訟を起こすことができるということです。
もちろん、訴訟は最終手段ですから、まずは話し合いによる円満な解決を目指すことが望ましいですが、過去の裁判例などを見ますと、訴訟により、内定取り消し無効を勝ち取った例も少なくありません。
例えば中途採用の内定者に対するものですが、次のインフォミックス事件の判例は参考になるでしょう。
Yは、人員削減の必要性が高く、従業員に希望退職等を募る一方、Xら採用内定者に相応の補償を提示し入社辞退を勧告するとともに、Xには入社を前提に職種の変更を打診したなど、採用内定の取消を回避するために相当の努力を尽くしており、内定を取り消したことには、客観的に合理的な理由がある。
入社日に近いほど違法になる可能性
この判例で示されているポイントは2つあります。
1つ目のポイントは、前半の部分に関してで、経営状況の悪化による内定取り消しは、既存従業員にも希望退職を募っているような切迫した状況でなければならず、また、相応の金銭的補償等をしたり、職種を変更しての入社を提案するなどの配慮をしたうえでなければ、合法的な内定取り消しとは言えないということです。
2つ目のポイントは、後半の部分の「内定を取り消す前後のYの対応には誠実性に欠ける」という部分で、さらに詳しく判例を読むと、内定取り消しを行ったのが、入社予定日のわずか2週間前で、本人も現職の会社に退職届を出した後であったということです。いくら金銭的な補償を提案したとしても、内定を取り消す時期が入社予定日に近づけば近づくほど、内定取消が違法になる可能性は高まるということです。
この点、新卒者の場合に当てはめて考えると、他の企業の採用選考を受けることが難しい段階で突然内定取消を受けたような場合は、内定取り消しは無効になる可能性が高いと言えるでしょう。
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