箱根登山鉄道「3カ月前倒し復旧」なぜ実現した? 西日本豪雨の鉄道復旧ノウハウも生かされた

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その背景には、近年、各地で大規模な災害が多発する中、復旧に向けたスキーム構築のノウハウが国の側に蓄積されていたことがある。例えば、2018年7月に発生した西日本豪雨ではJR呉線や山陽線をはじめ、各線で斜面崩壊による土砂流入や盛土流出など、今回の箱根登山鉄道と類似の被害が発生した。

このとき、国交省は鉄道の早期復旧を目指し、鉄道事業者と国交省の関係部局をメンバーとする連絡調整会議を開催し、事業間調整など必要な支援・協力を行った。その結果、呉線、山陽線ともに運転再開時期が当初予定よりも前倒しになった。こうした経験が、今回の迅速な対応につながったのだ。

試練が続いた箱根の鉄路

復旧作業は当初の予定より約3カ月も前倒しされ、7月23日の運転再開を迎えることができた。ただ、地球環境の変化により、今後も大型台風の影響が懸念される。あらゆる自然災害に対して完璧に備えるのは難しいが、せっかく復旧した線路を守るために、どのようなことができるだろうか。

2020年3月に新車に置き換えられた箱根登山ケーブルカー(筆者撮影)

土木担当者に質問したところ、「大沢橋梁、蛇骨陸橋以外で、今回、大きな被害を受けたのが、小涌谷踏切付近だった。国道1号から大量の雨水が流れ込み、線路下の道床が洗掘され(えぐり取られ)、レールが半ば宙に浮いた状態になった。復旧工事における対策として、被害状況を踏まえたのり面の強化などの対応も行ったが、今後は一定の雨量が見込まれる場合は、早めに運休の判断をし、土嚢を積んで線路内への雨水の流入を防ぐ対応を取ることなども必要になる」と、早めの判断、早めの対応が肝心であると話す。

箱根登山鉄道は、2015年の大涌谷の小噴火から昨年の台風19号被害と試練が続いたが、今年は箱根のゴールデンコース開通60周年のほか、3月20日にはケーブルカーの新車への置き換えが行われ、7月9日には早雲山駅がリニューアルオープンするなど明るい話題もある。新型コロナウイルスへの対応を万全にしつつ、今後、どのように集客を図っていくか、今まさに知恵を絞っているところだ。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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