日本の最低賃金「メキシコ並み」OECD25位の衝撃

給料安すぎ問題の根因「最低賃金」を上げよ

モノプソニーの力が働いていると、交渉力の特に弱い低学歴の人、65歳以上の高齢者、若年層、女性、外国人労働者は、それぞれが発揮している生産性に比べ、不当に安い給料しかもらえなくなります。

そうなると、本来払うべきだった給料との差額分だけ企業の利益が多くなるので、モノプソニーの力を使って利益を上げようとする、経済合理性の低い小さい企業が次から次へと生まれることになります。

しかし、モノプソニーによって企業経営者が得るメリットより、労働者が被るデメリットのほうが大きいので、国全体としては次第に経済が弱体化します。そうならないよう、各国政府はモノプソニーの力をある程度、抑制しようとしています。

モノプソニーの力が効き過ぎないよう制限をかけるのに有効な手段が、「最低賃金」です。近年、先進各国が最低賃金を導入して、段階的に引き上げている理由は、モノプソニーの力を制限するためです。

もちろん、先日の記事にも書いたとおり、最低賃金の導入や引き上げは格差対策でもあります。

交渉力の強い人はモノプソニーの影響をあまり受けない一方で、交渉力の弱い人は安い給料しかもらえなくなるので、格差がどんどん広がってしまうのです。日本はすでに、大手先進国の中ではアメリカに次ぐ第2位の格差大国ですが、そうなってしまった大きな原因がモノプソニーなのです。

最低賃金を適切に引き上げることで、格差は確実に縮小します。逆に言うと、最低賃金は格差の下限になるので、その水準の設定によって、政府が社会全体の「格差の幅」に大きな影響を与えることができるのです。日本では、この点について理解が足りていないように思います。

「日本の最低賃金が低いとは断言できない」という誤解

日本でモノプソニーの力が強くなっている原因の1つは、最低賃金が低いことです。これが「日本人の給料低すぎ問題」を引き起こす大きな原因になっています。

私がこのように主張すると、たまに「日本の最低賃金が低いとは断言できない」と反論してくる人が現れますが、完全な誤解です。どこが誤解か、検証していきましょう。

誤解1:日本の最低賃金はOECDで11位

「日本の最低賃金は、国際比較すると低いとは断言できない」と主張する人は、OECDのデータを使うことが多いです。

OECDは各国の購買力調整済みの最低賃金のデータを公表しています。2018年のデータでは、日本の最低賃金は11位でした。OECD加盟国の加重平均が15位につけていますので、11位というと、それほど低い順位ではないように思われるかもしれません。

しかし、OECDのメンバーの中には、生産性が11万2045ドルの国もあれば、1万6265ドルの国もあります。これほど経済力に開きがある国の最低賃金を絶対値で比較することには、そもそも意味がないのです。

日本は、同じクラスの先進国と比べるべきであって、生産性の非常に低いチリやメキシコより最低賃金が高いことを理由に、「低いとは断言できない」と言われても、ただの屁理屈としか思えません。後ほど説明しますが、主要先進国の中では、アメリカも含めて、日本は実質最下位です。

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