終了したい理由は、こうだった。
「秀明さん、結婚後も今の一戸建てで暮らしたいと考えているようです」
新宿まで電車で1時間かかる場所に、一戸建てを3年前に購入していた。
「私は結婚しても今の職場を辞めたくないし、そこから通勤するとなると1時間半かかる。1日のうちに、往復3時間を通勤にかけることは、考えられません。それに、車を足代わりに使わないと不便な場所。私は免許を持っていないし、ずっと都内で生活してきました。持ち家があるのはお見合いのときから知っていましたが、結婚後にそこに住むとは言っていなかった。『都内にマンションを借りてもいい』と言っていたのに、お会いしていくうちに、言うことが変わってきてしまったんです」
「家の事情」が変わった理由
入会面談のときに、私は、お相手選びの年齢の幅を広げることと一緒に、住む場所を限定しないことも伝えていた。そのとき、彼はこう言っていた。
「今住んでいる一戸建ては、結婚が決まったら誰かに貸してもいいかなと思っています」
ところが、なぜそこに住むことにこだわりだしたのか。敦子から交際終了が来たことを告げながら、家の事情が変わった理由を聞いた。
「親が結婚を急かすので、『結婚は考えていないわけではないし、婚活もしている』と伝えたんです。それで、『もし結婚する相手ができて、その相手が今住んでいる家だと通勤が不便だというのであれば、人に貸して都内のマンションで暮らそうと思う』という話をした。そうしたら、『人になんて貸したらどんなふうに使われるかわからないし、家が傷むからダメだ』と反対されまして」
それを聞いて、私が言った。
「秀明さんは、45歳のいい大人なんだし、親に反対されたからといって、それに従わなくてもいいんじゃないですか?」
すると、秀明が言った。
「実は、頭金を親が出してくれたんです。住宅を購入する場合、親からなら上限金額はありますが非課税で援助してもらえるから。生前贈与で、そのほうが得だと思ったので」
確かに親がお金を出していたら、口も出したくなるだろう。ただ住む場所を限定してしまうと、今回のように女性がそこに住むのを拒むと、まとまる話も壊れてしまう。30代の女性と結婚したいという条件はクリアしたものの、住む場所を限定したために、この話はなくなった。
敦子との交際終了後、いくつかのお見合いを繰り返したが、交際になっても1~2度食事をすると断られることが続いていた。そんな中で、昨年、父が他界した。
秀明は、男2人兄弟の長男だが、弟はすでに結婚をし、子どもも2人授かり、関西圏で暮らしていた。長男としての責任もあり、これから老いていく母の近くにいたいという気持ちがますます強くなったようで、今の持家に住むというのは、婚活していくうえでの譲れない条件となった。
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