ウスバキトンボの大群が背負う「はかない運命」 冬を越せず全滅するのに海を越え日本に来る

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さらには、最近、利用されている新しい農薬も赤とんぼに大きなダメージを与えているのではないかという指摘もある。

小さな害虫が米の汁を吸うと、米に小さな斑点(はんてん)が残ってしまう。米は見た目で価値が決まるから、この斑点を作らないために、農家は農薬をまく。この農薬は、人間やイネに対する毒性が低い一方、昆虫に対しては強い効き目がある。この農薬が赤とんぼにもダメージを与えているのではないかと推測されているのである。

農薬というと農家の人が悪者にされがちだが、そうではない。米についた小さな斑点を許容できない人たちが、田んぼに農薬をまかせているのだ。

日本人に親しまれたナツアカネやアキアカネが、人知れず姿を消している一方で、ウスバキトンボは頑張っているようだ。ウスバキトンボの群れは今でもよく見かける。

ウスバキトンボも、幼虫のヤゴは田んぼで観察されるトンボである。しかし、そのふるさとは日本の田んぼではない。

ウスバキトンボは熱帯原産のトンボである。ところが毎年、4月から5月になると、大群になって、南の国から海を越えて日本に飛んでくるのである。まるで、渡り鳥さながらである。

もっとも、飛行能力の高い渡り鳥と違い、小さな虫にとって、海を越える移動は途方もなく危険な冒険である。それでもトンボたちは日本を目指して旅立つのである。

都心で赤とんぼを見かけたとしたら

日本に渡ってきたウスバキトンボは、日本の田んぼで卵を産む。やがて、1カ月ほどもすると水田で生まれたヤゴたちは、羽化してトンボになる。羽化したトンボたちは、日本列島のあちらこちらへと移動して田んぼへ卵を産む。こうして数を増やしながら分布を広げていったウスバキトンボたちが、お盆の頃になると日本中で群れをなして見られるようになるのである。

ナツアカネやアキアカネが田んぼを中心として一定地域の中を移動するのに対して、ウスバキトンボは日本列島を大移動するので、田んぼのないような都会でも見かけることができる。都心で赤とんぼを見かけたとしたら、それは、おそらくウスバキトンボである。

祖先を乗せて飛んでいた「精霊とんぼ」。

しかし、お盆が過ぎると、季節は急に秋めいてくる。季節はやがて秋から冬へと移り変わっていくのだ。

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