コロナ禍「経済優先」したスウェーデンの悲惨 死亡率が増え、経済も近隣国同様の状況に
だが、高い死亡率と他国同様の経済悪化というスウェーデンの悲惨な結果は、「国民の命か、経済か」という選択肢が間違っていることを示唆している。行動を規制しなければ、生命と雇用の両方が犠牲となりかねない。
スウェーデン政府は国民の良識を信じ、行動規制をほとんど加えなかった。レストラン、ジム、店舗、観光施設の営業は許可され、大半の学校が休校措置をとらなかった。デンマークとノルウェーはこれとは対照的に厳格なロックダウンを選択。大人数の集まりを禁止し、店やレストランも休業させた。
あれから3カ月以上が経過し、スウェーデンのコロナ死者数は5500人を突破した。アメリカの死者が13万人を超していることを考えれば、それほどひどい数字には見えないかもしれない。しかしスウェーデンの人口は、たったの1000万人なのだ。100万人当たりに換算すると、その死者数はアメリカを4割上回り、ノルウェーの12倍、フィンランドの7倍、デンマークの6倍にもなる。
今年は4.5%のマイナス成長に陥る見通し
スウェーデン方式の結果、死亡率が高まったことは何週間も前からわかっている。ここに来て新たに見えてきたのは、経済に隣国と同程度の打撃が出ているという現実だ。スウェーデンは経済活動に制限を加えなかったにもかかわらず、ビジネスは壊れ、景気が後退している。
スウェーデンの中央銀行によれば、同国経済は今年4.5%のマイナス成長に陥る見通し。従来の1.3%成長見通しから大幅に下方修正されている。5月の失業率も9%と、3月の7.1%から跳ね上がった。オックスフォード・エコノミクスは最近の報告書でこう結論づけた。「経済全体に打撃が広がっており、回復にはかなりの時間を要する。失業率も高止まりが続くだろう」。
これはデンマークがパンデミックで受けた打撃とほとんど変わらない。デンマーク経済は、同国の中央銀行によると、今年4.1%縮小する見通し。5月の失業率も5.6%と、3月の4.1%から悪化した。
要するに、スウェーデンは期待された経済的なメリットを得ることもなく、圧倒的に高い死亡率を抱え込んだことになる。
新型コロナは国境を越える。スウェーデン政府は国内経済を回す決断を下したが、企業はほかのあらゆる国々に不況をもたらしたのと同じ要因で行き詰まった。そして国民はウイルスに感染する恐怖から買い物を控えるようになった。こうした国民の行動は死亡率の上昇を防ぐほどの効果はなかったが、ビジネス活動の衰退を引き起こすには十分だった。