日本は2月13日、新型コロナの拡大を防止するため、中国・湖北省に続き、浙江省に滞在歴のある外国人などの入国も禁止した。浙江省の感染者数は5月13日発表時点で1268人。湖北省、広東省、河南省に次いで中国で4番目に多い(中国だけで感染拡大していた頃、筆者は1つの省で1000人以上感染者が出ていることにおののいたが、今となってみれば、1000人でよく抑えられたとも思うようになった)。
多くの日本人にとって、中国の商業都市としては上海、製造業とITのハブである深圳、首都の北京までしか思い浮かばないかもしれない。だが、浙江省は中国では「商業大省」として知られており、アリババのジャック・マー氏を筆頭に数々の著名起業家を輩出している。アリババが本社を置く杭州市のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未公開企業)は、深圳市より多い(2017年時点)。
浙江省で新型コロナが蔓延した理由について、中国メディアや有識者は「勤勉で開拓精神あふれる浙江商人の機動力が逆作用した」と分析している。北京市の幹部がかつて、「なぜジャック・マーのような起業家は北京ではなく浙江省から現れたのか」と嘆息したという話がある。その言葉に、浙江省の特性だけでなく、新型コロナが他都市より拡大した理由が凝縮されている。
勤勉さと開拓者精神を併せ持つ浙江省
浙江省は沿岸の大都市だが、改革開放後の1980年代に上海、広東省のようには海外からの投資を得られなかった。だが、与えられなかったが故に、勤勉さと開拓者精神を併せ持つ起業家が多数生まれ、民営企業が勃興・成長したと言われる。
マー氏は大学教師をしていた1994年に翻訳会社を設立したが、事業がうまくいかない時期は、ギフトや生花の卸売りをして経営を維持した。マー氏自身も週末になると、同じ浙江省にある中国最大の日用品取引市場「義烏」に足を運び、商品を仕入れていたという。
アリババを設立したときは、中小企業の経営者をターゲットに定め、「すべての商人に使ってもらうインターネットサービス」を目標に掲げた。ターゲットが大企業でも消費者でもなく中小企業だったのは、マー氏の中の浙江省DNAが影響したのだろう。
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