アメリカで大統領選後に大混乱が起きるワケ トランプ氏は今から選挙に関して不穏な動き
歴史をひもとけば、1876年大統領選ではラザフォード・ヘイズ候補(共和党)とサミュエル・ティルデン候補(民主党)の対決がある。ルイジアナ、フロリダ、サウスカロライナの3州の全選挙人19人およびオレゴン州の選挙人1人について党派で見解が分かれ、州政府は異なる候補を勝者とする2つの選挙人認定証書を連邦政府に提出し、議会が設置した超党派の委員会の判断に委ねられた。大統領就任式2日前に両党および大統領候補が妥協策に合意し、当選者はヘイズに確定した。
2020年大統領選でも同様のことが起こる可能性はある。11月大統領選を制する候補は激戦州で勝利することが重要となる。
2016年大統領選ではペンシルベニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州のラストベルト地域で計約7万8000票という僅差でトランプ大統領が勝利した。同地域は今回も接戦が予想される。前述のブルーシフトをはじめ郵便投票の開票作業が争点となる可能性もあろう。これら3州では州議会の多数派と州知事とが異なる政党であるため、開票結果が党派間で争われた場合、州議会と州知事がそれぞれ異なる大統領候補を勝者とする選挙人認定証書を連邦政府に提出するリスクもある。
だが、1876年と異なるのは、今日、アメリカ社会は南北戦争以来となる二極化が進んでいるとも指摘されることだ。妥協策に両党が合意することは極めて困難であるし、どのような妥協策に合意したとしても各候補そして政党の支持基盤からの批判が強まり、社会不安が広がるのは必至だ。
平和的な政権交代は大統領候補次第でもある
アメリカの民主主義が最大の存続リスクにさらされるのは、いつも政権交代の時期だ。
1860年大統領選後、ジェームズ・ブキャナン大統領からエイブラハム・リンカーン大統領に交代するまでのレームダック期間に、奴隷制度維持を望む南部7州が合衆国を脱退し、リンカーン政権発足の翌月に南北戦争に突入した。さらに南部4州が追加で脱退した。
アメリカ憲法第2章第1条は、大統領の選出方法について規定している。だが、平和的な政権交代は各大統領候補が社会規範に従うという個人への信頼に依存してきた。建国の父たちは憲法執筆の際、今日のような極度な二極化社会を想定していなかったとも指摘されている。社会規範に従わない大統領候補、そしてそれを煽る政党、メディアなどが平和的な政権交代を阻む時代になり、憲法の規定がそぐわないことが浮き彫りとなっている。
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