ベンチャー投資家の極意「黄金の時間の買い方」 日本がシリコンバレーで情報がとれない理由

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ところが、その感覚もない。「できればすべてで投資を成功させたい」「本社の上司がそれを望んでいる」という無茶な要求もあります。

逆に日本の大企業のCVCだと知って、近づいていくベンチャーもいます。ここなら確実にお金を集められる、と。完全にカモネギです。実際、残念なことに、他のベンチャーキャピタルが「さすがに、ここは……」と躊躇するところに日本のCVCが投資をしていたりします。これが生き馬の目を抜くシリコンバレーの現実です。

参考までにベンチャーが十分に大きく育った、いわゆるレイターステージの場合は、投資枠はふんだんにあり、投資のハードルはとても低くなります。潰れる心配は少なくなりますが、投資リターンは少なく、ベンチャー側からの協業の優先順位も下がります。たまに、このステージに投資をして「有名企業に投資をした」とアピールするところがありますので、注意深く実際の投資リターンを見極めてください。

コマツ、東京海上日動などの成功事例

もちろん日本企業でも、うまくいった事例はあります。例えば、コマツは、シリコンバレーの有力ベンチャー、スカイキャッチの技術力をメイン事業に取り入れています。

工事現場でドローンを飛ばして収集した地形などのデータをスカイキャッチのデータ解析力によって短時間で「見える化」して、現場作業の生産性や安全性を格段に高めています。

技術の目利き力を持った担当者がシリコンバレーで複数のベンチャーキャピタルに出資をし、人脈を築き、そこで収集した精度の高い情報をスピーディーに日本本社の経営陣と共有し、その採否を経営トップが即断したことがこの成功をもたらしました。

コマツはシリコンバレーで役員会を開催したりもしており、スピーディーな意志決定を可能にしています。社長をはじめ役員がシリコンバレーにそろい、ベンチャーのトップと直接コミュニケーションを交わしたりしている。こうした中から、メイン事業にドローンを活用するスカイキャッチへの協業を決めました。

コマツのCTO室の部長だった富樫良一氏がスカイキャッチを見いだし、技術革新にキャッチアップしようと考えた、日本企業の投資の好事例になりました。

また、東京海上日動は、保険という専門領域をうまく使い、自動運転と掛け合わせた「インシュアランス エックス:Insurance X」というイベントで知名度を上げ、インシュアテック(保険のテクノロジー)の代表的なベンチャーであり「走った分だけ払う保険」のメトロマイルへの投資にこぎつけました。

東京海上日動についてシリコンバレーの人が何も知らなくても、このイベントの登壇者と招かれる人が興味深いので、有力者や業界関係者が多く集まったのです。このイベントによって知名度が上がったことにより、ベンチャーからのアプローチや人を介した紹介が増え、そのつながりが別のつながりを生む好循環となりました。その積み重ねによりシリコンバレーのエコシステムに入ることに成功、他社がなかなかアプローチできなかったメトロマイルに出資することができたのです。

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