IFRSの導入を日本の資本市場活性化の好機に--ジェームス・クィグリー デロイト トウシュ トーマツCEO
日本では今年から任意適用が始まるIFRS(国際財務報告基準、イファース)。2012年には強制適用するかどうかが判断される。しかし、IFRS導入の事務コストを考えると、景気低迷期での会計基準の移行は企業には重い課題。昨年から移行へ動き出した米国でも同様の問題を抱える。IFRS導入のメリットは何か--。FASB(米国財務会計基準審議会)の上部機構の評議員も務める、デロイト トウシュ トーマツのジェームス・クィグリーCEOに聞いた。
--企業経営にとって、IFRS導入のメリットは。
企業が高品質のスタンダードを導入すれば、資本市場がより効率的になるというメリットがまずある。そうなれば、全世界で監督している規制当局もシステムリスクの予防や金融規制面で、指導しやすくなる。
企業サイドから見れば、継続的な資金調達先である投資家に提供する財務情報の効率性が高まる。資本調達面でもグローバルな資本市場で競争していくことが可能だ。たとえばヘッジファンドであると、財務情報を分析するわけだが、それぞれの市場でばらばらな基準よりも「共通の言語」でまとめられた情報のほうが比較も分析もしやすくなる。
日本の上場会社の多くは海外で現地法人などを持っている。そういった子会社からの財務情報、リポーティングが、IFRSですべて提供されれば、連結ベースでの財務諸表を作りやすくなる。
--国際業務をしていない日本企業には導入メリットが見えません。
たとえば地方銀行のコメントを見ていると、何のメリットもないと言っているが、それは外資が自分の銀行株を買ってないから。導入して海外投資家が入ってきたら、今度は買収されることを心配するわけ。しかし、それは会計の問題ではなくて、経営のビヘイビアの問題だ。もう一つは、日本の資本市場が残念ながら活性化していない。逆に言うと、IFRS導入を契機に資本市場がアップグレードしていけばいいと思う。