初代レクサスLS400「世界に与えた衝撃」の回顧 200km/h超の領域でも感じたケタ外れの静粛性

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僕もむろんアウトバーンを走った。何度も何度も。アウトバーンを予測した走りは、テストコースで散々トライしてきたことだったが、それでも、初めは緊張した。

テストコースでの僕の判断と、実際のアウトバーン走行との間に大きな乖離はないか……不安だった。開発チームは当然アウトバーンも走り込んでおり、その結果も聞いていた。小さなことを除けば、結果は上々だった。

上記のように、緊張してアウトバーンに乗り入れた僕だが、数分走っただけで不安は消えた。同時に緊張も消えた。

あとは、日本史に残る、いや、世界史にも残る名車を楽しみ、味わうだけだ。

まずは、150km/h前後の流れに乗った走行車線でのチェック。文句なしだった。スタビリティにも不安はないし、乗り心地もOK。静粛性は「超!」のつくハイレベルだった。

そして、180~200km/hで流れる追い越し車線へ。

メルセデス、BMW、アウディ……艶やかなモノトーン系の装いをまとい、VIPらしきドライバーがステアリングを握る……LS400の仮想ライバルたちが主役を務める流れに入った。

LS400 の公称最高速度は250km/hだが、どこまで速度を上げたかは覚えていない。

追い越し車線の速度は180~200km/h辺りが平均的。速いクルマは220km/h辺りで走る。とんでもない速度で飛ばしているクルマにも出会うが、ごくたまにだ。

僕はたぶん200~230km/h辺りで、あれこれチェックしながら走ったと思うのだが、エンジンの滑らかさと全体的な静粛性の高さはまさしく「未体験ゾーン」だった。

テストコースでは何度も体験していたLS400の静粛性だが、多くが共存する「リアルな世界」で味わう静粛性には、「凄み」さえ感じさせられた。

高級車の世界に新しい基準を持ち込んだLS400

なみなみとシャンパンを注がれたグラスが何段も積み重ねられ、ボンネット上に置かれている。そして、エンジンをかけるのだが、グラスのシャンパンは微かなさざ波を見せるだけ……有名なLS400のCMだ。

レクサス販売店を訪れる客は必ずこのCMを話題に出したという。当然だろう。それに対応するため販売店が使ったのは、シャンパングラスではなく、コインだった。

ペニー(1セント)かクォーター(25セント)は知らないが、コインをエンジンの上に置いてスターターを回す。コインはピクリともしない……そして「1台ご成約!」となる。

精巧な造り、ケタ外れの静粛性、優れた燃費……LS400は、日本が不得手にしていた高級車の世界に新しい基準を持ち込んだのだ。

(文:岡崎宏司/自動車ジャーナリスト)
 

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