初代レクサスLS400「世界に与えた衝撃」の回顧 200km/h超の領域でも感じたケタ外れの静粛性
とくに微妙な音や振動の評価は感受性と集中力が求められるが、シンとした10kmの周回コースは、僕に高い集中力を持たせてくれた。
チーフエンジニアをはじめ、主要開発メンバーとのコミュニケーションも密だった。
突然電話が入り、「すぐ意見を聞きたいことがある。今から東富士にきてくれませんか。無理だったら、こちらが指定の場所に行きます」といったようなことさえ何度かあった。
「絶対に世界超一級のクルマを作る!」という熱意はすごいものだった。上記のような突然の電話による招集にしても、そんな背景あってのものと理解していたので、僕はなんの抵抗もなく受け容れられた。
日本のジャーナリスト向け初試乗会が行われたのも士別テストコース。その時もひとあし先の士別入りを頼まれた。最終チェックに参加してほしいとのことだった。
国際試乗会はフランクフルトで行われた。空港に近いホテルで、アウトバーンへも5分程度でアクセスできる。
アウトバーンへのアクセスがいいということは、「アウトバーンを走ってほしい」ということにほかならない。
ジャーナリストたちから「絶賛の嵐」
当時のアウトバーンは文字通りの速度無制限。追い越し車線を走るクルマは200km/h前後で流れていた。
レクサスLS400が挑戦するメルセデス、BMW、アウディ等々のラグジュアリーセダンも、そんな追い越し車線の常連だ。
自らの手でステアリングを握るアクティブなVIPたちは「かなり飛ばす!」。「ダークスーツにタイ」姿で追い越し車線を突っ走るジェントルマンは珍しくなかった。
そんなアウトバーンで、世界から集まったジャーナリストたちは、LS400にどんな評価を下したのだろうか。
ひとことで言えば「絶賛の嵐」だった。ちなみに、走る前の静的評価では「精巧な造り込み」に感嘆の声が上がった。
アウトバーンでの200k m/h オーバー領域でも不満を感じさせることはなかった。誰もがジャーマン・プレミアム3のライバル車たちを念頭に置いていたはずだが、その結果の「絶賛」なのだからすごい。
なかでも、多くのジャーナリストが共通して驚いていたのは「静粛性」。
「異次元」「圧倒的」「驚異的」「ありえない」……そんな言葉が次々飛び出した。
僕はそんな結果を予想していた。が、実際に試乗会の場でそうした声を聞くと、感情は昂ぶる。そして、自分が、そんなクルマの開発に関われたことの喜びが、否応なく胸の底から湧き上がってきた。