中国広州・リトルアフリカ現地ルポ--“アジアのブルックリン”現る! 20万人が一獲千金を夢見る街
ナイジェリア出身のダニエル・デズモンドさんは今夏から、広州駅近くの三元里にある商業ビルでアフリカ人向けの理髪店を営んでいる。2畳のテナントスペースに椅子と鏡を設置しただけの簡素な店。料金は1回10元(約140円)と中国の理髪店より安い。
客は毎日20~40人に上り、毎月テナント賃料1500元(約2万1000円)を払っても十分利益が残るが、「この仕事で終わりたくない」と悔しげだ。
デズモンドさんは09年春、貿易商を志して広州へ。自身の貯金や家族などから集めた6000ドルを元手に、女性向けのアパレル品を買い付け母国の知人に販売を託した。だが商品が母国で思うように売れず、まだ代金を回収できていないのだ。
当面の生活手段として選んだのがこの小さな理髪店。代金を回収するか、理髪店の稼ぎを蓄えるかで、再度アパレル品の買い付けに挑戦しようと臥薪嘗胆の日々である。
しかしデズモンドさんに再起のチャンスがあるかは不透明だ。というのも、アフリカ商人のビジネス環境は、“新たな参入者”の台頭で急速に悪化しているのだ。
台頭する中国人貿易商 工場勤めのアフリカ人も
「ここ1年、利幅は薄くなる一方だ」。タンザニア出身のムスタファ・ハジさんは、苦々しい顔で語る。07年から母国や近隣のコンゴ向けに電動工具や液晶テレビ、太陽電池パネルといった工業品を輸出してきたが、09年に入り中国人貿易商が急増し、競合者として無視できない存在になっているという。
「中国人はまったく同じ商品を、こちらの仕入れ値よりもはるかに低い価格で売っている。顧客が次々と中国商人に奪われている」とため息をつく。