日立製作所、「週2~3日出社」を導入する理由 在宅勤務導入で「ジョブ型雇用」転換を加速

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――在宅勤務を全社の基本にするというのは大転換ですね。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

日立は1999年から在宅勤務制度を導入してきたが、利用者は少なかった。週1回使う人が約5%、月1回が13~14%程度だ。しかも、育児や介護などやむをえない理由のある人ばかりだった。

普通に出勤できる人が使わない理由は、「自分だけ在宅してほかの人が出勤していると迷惑をかけてしまっているのではないか」という負い目があるからだ。ところが、今回のコロナ禍でそうしたものが半ば強制的に消えた。今は社長以下が在宅勤務で、ハードルはなくなった。

ジョブ型雇用の課題とは

――ジョブ型雇用へ転換加速するきっかけが在宅勤務になるのでしょうか。

そうだ。いわゆる新卒で仕事を決めずに入って、人に仕事をつけて社内で育成し、ローテーション(異動)しながらポストが上がっていき、最後は定年という形にはもうしたくない。こうしたメンバーシップ型(の雇用)ではなく、仕事に人をつける形にしたい。それがジョブ型だ。

なかはた・ひでのぶ/1961年生まれ。大分県出身。1983年九州大学法学部卒業後、日立製作所入社。主に人事畑を歩み、2014年執行役常務CHRO兼人財統括本部長。2020年4月から現職(写真:日立製作所)

多様な人材は日立の中だけでなく、外部にもたくさんいる。そうした人を採用するためにはジョブ型が欠かせない。今の日本は300万人ぐらいの転職市場があるとされるが、それでもまだ流動性が少ない。転職時のハードルが高くなるのは、メンバーシップ型雇用の企業がほとんどだからだ。

1つの会社でずっと育っている人が多い中に、外から入っていくのはかなりのチャレンジになる。そこでは仕事もあまり明確になっていない。これをジョブ型に変えれば、転職もしやすくなる。

――具体的にどのようにしてジョブ型へ転換させていくのですか。

今、日立ではジョブディスクリプション(職務記述書)を作っている。会社は「このポジションはこんな仕事で、こんな経験やスキルが必要です」とオープンにする。

社員にも自分のやりたい仕事や保有するスキル、キャリアプランなどを書いてもらう。自分のスキルと見比べて自分でやりたい仕事に手を上げるようにする。10人ぐらい集まると、その中から会社が最適な人をアサインする。それは年齢に関係ない。あくまでも経験やスキルで選ぶ。そうすると優秀な人材が最適なポジションにいくことになり、アウトプット(成果)が出るはずだ。生産性も上がるだろう。

日本企業の生産性が上がっていない最大の理由は、成長する事業に人を持っていけていないからだ。企業には残念ながらこれ以上伸びない事業もあるが、そこが意外と忙しい。利益があがらないのに、そういう事業に限って優秀な人材が張りついているケースがある。日本全体でも日立でもそうで、それを解消していきたい。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「人事評価や管理職の仕事がどう変わるか」「人事制度改革の取り組み」「今後の採用の在り方」についても詳しく語っている。
冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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