ところで、日本の生産性は、先に示したOECDのデータが示すほどアメリカよりも極端には低くはない。だが先進国の中で高くはないのは事実だろう。その最大の理由は、労働生産性(GDP÷労働投入量)の分子であるGDPが、1990年代半ば以降のデフレ到来とともに、伸びが大きく低下したことだと筆者は考えている。
これは総需要の停滞という金融財政政策の失政が長年放置された帰結であり、これには明確な因果関係があると考える。
一方、先に紹介した、コロナ騒動と日本の労働生産性を安易に結びつける議論は、日本の経済政策運営の失敗とデフレの問題を軽視する論者によって唱えられているようにみえる。
アグレッシブな拡張財政実現が焦点に
コロナ後の日本経済を展望する上で最も重要な論点は、デフレから完全に脱却して2%のインフレ安定を実現することの重要性を前提にした、経済政策運営が実現するかどうかである。
コロナ禍で2020年前半の日本経済は歴史的な落ち込みとなったが、そもそも2019年10月の消費増税によって一足早く日本経済は景気後退が始まっていた。2%のインフレ安定を前にした緊縮財政への転換を失政と認識して、今後アグレッシブな拡張財政を実現するかどうかである。
日本の政治情勢を見渡すと、年内の解散・総選挙の可能性が浮上しているようにみえる。総選挙後に、金融財政政策の重要性を理解しているリーダーが就任すれば、コロナ後の日本経済にもある程度は期待できるだろう。日本の労働生産性の動向を決めるのは、在宅・リモート勤務の広がりよりも、2021年以降の日本の政治体制だと考えている。
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