2代目「三菱パジェロ」が残した今も生きる技術 災害や電気自動車に役立つ悪路走破の制御

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4輪駆動のモードには4H、4HLc、4LLcの3つがあった。4Hは、センターディファレンシャルとビスカスカップリングの働きにより、雨天や高速道路での安定性確保に役立つモード。4HLcは、雪道などより滑りやすい路面状況で走る。

4LLcは、副変速機の低速ギアを併用し、徐行するような低速で着実に前進する過酷な悪路走行向けだ。ほかに、ウインチなどをエンジンで動かすためのNが(ニュートラル)があり、すべてシフトレバー横のトランスファーレバーで選べる。

ATシフトレバーの右側にあるレバーがトランスファーレバー(写真:三菱自動車)

このシステムなら、通常はフルタイム4WDとして、運転に未熟な人でもタイトコーナーブレーキングによりクルマが動かなくなってしまう心配がない。それでいて、パートタイム4WD車と同様に、未舗装路での走破性を確保できる。誰もが本格的な4輪駆動車を堪能できるようになったのだ。

4輪駆動の制御技術は電気自動車にも生きる

2代目パジェロがもたらした4輪駆動車の機能は、その後のSUVの普及につなげることに役立っている。SUVには、かつてのRVほどの悪路走破性は期待されない。しかし、運転に熟練していなくても4輪駆動がもたらす安全で確実な走りは重要だ。その礎が、2代目パジェロでもたらされたと言える。

そのうえでパジェロは3代目、4代目へと進化するにつれ、4輪駆動に電子制御を組み入れ、より精緻な制御を行うようになった。そうした技術は、1992年から発売された「ランサーエボリューション」でも磨かれ、三菱はWRCで活躍する。

「ランサーエボリューション」の歴代モデル。1992年から2016年にかけて進化を続けた(写真:三菱自動車)

ことに旋回性能と4輪駆動の組み合わせでは、電子制御を生かした三菱の技術は世界屈指だ。この駆動制御の技術は、将来的にEV(電気自動車)でさらに活躍するだろう。各輪に備えた全4つのモーターを個別に制御することで、高い走行性能と安全性の確保に役立つ。次元を超えた自動運転技術へと、昇華させていける潜在能力があると言ってよい。

パジェロを起点とした4輪駆動技術による高い悪路走破性について、2度のパリ~ダカール・ラリー優勝経験を持つ増岡浩は「災害が増えた今日、自分のクルマで自宅へ安全・確実に帰れるのが三菱車だ、という魅力につながる」と話す。

もし、三菱が初代パジェロを作らなかったら、パリ~ダカール・ラリーへ参戦することはなかっただろう。地球の生の姿といえる荒野をクルマで走り、目的地に確実に到着できるための知見を積み重ねたことで、増岡の自信に満ちた言葉が導き出されている。それは三菱の財産だ。

そうした三菱を象徴したパジェロは、昨2019年に国内での販売を終了した。しかし、その技術や精神は、「アウトランダー」をはじめ残されたSUVに注入されているはずだ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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