2代目「三菱パジェロ」が残した今も生きる技術 災害や電気自動車に役立つ悪路走破の制御

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同時に未舗装で、かつ道として整備されていない荒野を高速でひた走るため、参加するクルマには耐久性が問われた。パンクや故障は、競技者が途中で直しながら競技を続けなければならず、まさに4輪駆動車の実力が試される大会である。

「テレフォニカ・ダカールラリー2004」に参戦する「パジェロエボリューション」(写真:三菱自動車)

三菱はこれに1983年以降、毎年参戦し、1985年に初優勝を果たして以後、2007年までに累計12勝を挙げる。

その間、1997年には篠塚建次郎、2002~2003年には増岡浩が優勝し、日本人の活躍によってパジェロへの注目はいっそう高まり、RVを象徴するブランドとして消費者の憧れの的となった。

4輪駆動技術から見る2代目パジェロの功績

4世代続いたパジェロの歴史の中で、最も高い人気を誇ったのは、2代目(V系)ではないだろうか。

2代目「パジェロ」は1991年に登場し、1999年まで販売された(写真:三菱自動車)

三菱には「ジープ」という軍用として活用できる本格的4輪駆動車があったが、それをより身近なRVとしたのがパジェロである。それでも初代はまだ、4輪駆動車の扱いに熟練した人向けといった存在であった。

それを象徴するのが、4輪駆動方式だ。一般的にパートタイム式と呼ばれる仕組みで、後輪駆動をもとに、トランスファーと呼ばれる駆動力分割機構を備え、これを連結することにより前輪へも駆動力を伝達する。前輪の車軸には、前輪でも駆動するためのオン・オフ式の固定機構を備えていた。

4輪駆動とした際には、前輪と後輪の駆動力配分は50:50となり、この配分は最も的確にクルマを前進させる能力を持つ一方で、4輪とも同じ回転で駆動力を持つため、大回りするカーブはともかくも、舗装路で小回りすることが難しく、前進も後退もできなくなってしまう「タイトコーナーブレーキング」という現象が生じる。

そこで、小回りが必要な場合には、あらかじめ後輪駆動へ戻す操作をしなければならない。運転に予測が不可欠で、運転者自身が4輪駆動でいくか、後輪駆動に戻すかをつねに先読みしながら運転することになる。それにはある程度の熟練を要した。

1991年に登場した2代目パジェロになると、4輪駆動の方式が変更になる。前後の駆動力配分をセンターディファレンシャルとビスカスカップリングにより自動的に調整する機能を備え、常に4輪駆動で走ることを可能としたもの。ビスカスカップリングとは、一種のクラッチ機能だ。

いわゆるフルタイム4WDと言われる方式だが、パジェロはセンターディファレンシャルを固定状態にすることで、パートタイム式と同様につねに前後50:50の駆動力配分としたり、後輪駆動にしたりすることができるマルチなシステム「スーパーセレクト4WD」としていた。

次ページ誰もが乗れる「本格的な4輪駆動車」の実現
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