鳩山政権のビジョンなき政策への懸念、企業の日本脱出誘発も
政府の成長戦略なき資金調達
最近の円高で輸出型産業は動揺した。米国経済危機を背景にしたドル暴落懸念と相まって、円相場の先行きにも不安を払拭できない。
それに対して、中国や韓国などは、自国通貨の対ドル価値を維持するために、国内経済が好調であるにもかかわらず、為替介入(ドル買い)を積極化させ、自国通貨高を阻止。結果、それらの国では外貨準備が増加した。
ひるがえって、わが国では藤井裕久前財務相など、為替介入に消極的な発言が目立ち、実際、ドル売り介入は実施されていない。過剰な円高恐怖症(円安依存症)は産業の体質を弱める。したがって、安易な介入願望は好ましくない。
しかし、現政権が円高にやや無頓着に見えたのが「内需主導による経済構造転換」という政権発足当初の方針と関連しているとすれば不安だ。
内需主導の経済構造を構築できるかは甚だ疑問であるし、景気悪化の下での構造改革は、悪天候下で最も険しい登攀ルートを選択したのに等しい。到達可能性の低さの割に危険性は過大だ。
この点に関連していえば、なぜ、国内の資産運用難を踏まえた本格的な国際分散投資の促進を推進しないのか。短期的でリスキーなFX投資の規制は好ましいが、その一方では長期的な国際分散投資への基盤づくりが不足している。
政府は現在、欧米に比肩する市場インフラ構築を目的とした、わが国の金融・資本市場の整備を議論している。しかし、その中には、家計などの資金を長期的な国産分散投資に誘導して資産形成させるという発想は見えない。
資産形成とともに、円相場の安定(急激な円高の抑止)に資するものであり、外需への依存度が高いわが国にはあってしかるべき政策発想のはずであるにもかかわらず、だ。
一方、鳩山由紀夫政権は「輝きある日本へ」という名称を施した新成長戦略をようやくまとめたが、その策定プロセスに粗雑さは否めない。
内容的にも、戦略の下にあるはずの戦術が見えてこない。それでいながら、12月25日に閣議決定した2010年度予算案は一般歳出が過去最大規模の53兆円となった。しかし、ここにも戦略は乏しい。
むしろ、末期の自民党政権による09年度予算の第1次補正(13・9兆円)ベースと比べると、歳出規模は縮小してしまう。財政悪化は由々しき事態であるとはいえ、財政面では景気刺激よりも(財政)デフレを助長しかねない面すらある。