鳩山政権のビジョンなき政策への懸念、企業の日本脱出誘発も


 それとは相反するような問題ではあるが、同予算案では税収と国債発行額が戦後初めて逆転した。むろん、税収が大幅に落ち込んだ一方で、国債発行額が増加したからである。鳩山政権には、この事態に対する改善策提示への意識が希薄である。

企業であれば、巨額の資金調達や増資の際には、その資金や資本を活用して自社がいかに成長するのかというエクイティストーリーの提示が強く求められる。これに失敗すれば、増資や資金調達が困難化したり、高コストの調達にならざるをえない。

鳩山政権はいまだに埋蔵金探しをやっているが、今迫られているのはエクイティストーリーであり、それは増税による財政健全化を抜きにしては語れない。確固たる成長戦略の伴わない増税論もありえない。

別の問題もある。鳩山首相が世界に公約したCO2削減目標(20年までに90年比25%削減)だ。地球環境問題について、わが国が世界を主導した面はある。しかし、その達成方式次第で、わが国産業界は生産活動に大きな制約を受けかねない面もある。その懸念を払拭させるようなビジョンがここでも伴っていないのは残念なことである。

目に余る参院選への執着

世界経済はアメリカ経済の一段の悪化に起因する二番底という暗い予想がある。そうなれば、日本経済は大変に厳しい局面に立たされる。アメリカ経済の(一時的?)回復で二番底回避という見通しもある。わが国も最悪場面を避けられる。この僥倖が与えられた間に、政府は確固たるエクイティストーリーと成長戦略を提示し、実行に移せるか。

09年、現政権の政策、政治活動の裏側には、組織票の影響度が高い参院選に向けた小沢一郎幹事長流の票固め的な要素が色濃く、純粋な経済政策は期待外れだった。きちんとした政策の立案・実行によって、参院選で国民の審判を受ける正攻法をとらないと、僥倖も無駄になる。わが国企業が抱く「日本にとどまることのリスク」は増幅しかねない。

(シニアライター:浪川攻 =週刊東洋経済)

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